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乾いた風が吹くテキサスで、AI向けの巨大な計画が一段進んだ。英スタートアップのエヌスケールが、マイクロソフト向けに新たなデータセンターを建設することで合意したと発表した出来事である。最大240メガワットの電力枠に、NVIDIAの最新「GB300」を約10万4000基。ここ2カ月で4件目の合意とされ、世界のAI基盤を底上げする動きが一段と加速していると映る。
テキサスで動く「第4の合意」
エヌスケールは2025年10月15日に、マイクロソフトとの拡大契約を公表した。テキサス州内の非公表地点に建設する施設は、最大240メガワットの電力供給能力を備え、2026年7〜9月に段階稼働を始める計画である。新施設にはNVIDIAの新型「GB300」を約10万4000基導入する方針が示された。場所を伏せたままでも、桁違いの規模感だけは明確に打ち出した格好だ。
このテキサス計画は、Ionic Digitalからのリース用地に建つ。将来的にフットプリントは1200メガワットまで拡大する構想が付くとされ、マイクロソフトは2027年後半開始の700メガワット第2段階に対するオプションも握る。発表文言からは、電源や冷却、チップ供給の段階的確保を織り込んだ工程管理の厳密さがうかがえる。
現時点で確認されている範囲では、今回のテキサスは両社にとってここ2カ月で4件目の合意と報じられている。AIインフラ不足を補うため、マイクロソフトが新興クラウド事業者と結ぶ一連の契約群の中核に、エヌスケールが位置しつつある構図が浮かぶ。従来の自社建設一本槍から、機動的な外部調達を織り交ぜる局面に入ったとみられる。
欧米に広がる配置と時系列
テキサスに先立ち、両社は欧州でも相次いで動いた。ポルトガルでは、首都リスボンの南に位置するシネスの大型データセンターパークで、2026年1〜3月に約1万2600基のGB300を稼働させる計画が公表されている。欧州域内での主権性を重視した「ソブリンAI」需要に応える布陣であり、電力・冷却面での地理優位を活かす狙いがにじむ。
英国では、ロートンAIキャンパスにおいて、50メガワット規模（最大90メガワットまで拡張可）の拠点に約2万3000基のGB300を集約し、2027年1〜3月からマイクロソフトのサービスを支える計画が掲げられた。欧州北部ではノルウェー・ナルヴィクのハイパースケール拠点で、約5万2000基のGB300を段階的に提供する合意も示され、寒冷地の自然条件を冷却効率に転じる設計がのぞく。
こうした多拠点の同時並行は、チップ・電力・用地といった制約条件を時間軸でずらしながら吸収する考え方に沿う。テキサスが2026年7〜9月、ポルトガルが2026年1〜3月、英国が2027年1〜3月というリズムで稼働が重なり、供給力の谷をつくらない設計である。AIモデルの刷新サイクルに耐える「面」での供給計画が広がっていると映る。
半導体・電力・需要の三つ巴
背景には、生成AIの普及でコンピューティング需要が急増し、自社サーバーファームだけでは追いつかない現実がある。マイクロソフトは、コア事業の成長を下支えするために、コアウィーブやネビウスなど新興クラウド事業者との契約も重ねてきた。エヌスケールは2024年に暗号資産マイニング事業から分かれ、GPUクラスターとデータセンターを縦につなぐ体制へと舵を切った企業である。
もっとも、AI拠点の建設・運用は電力と水を大量に要し、周辺インフラと地域社会に負荷を与えやすい。テキサス計画でも最大240メガワットという数字が独り歩きしないよう、再生可能電源の調達や冷却方式の最適化、送配電の混雑回避など、実装段階での工夫が問われる。欧州側でも、域内規制や主権要件への精緻な適合が欠かせない。
それでも、今回の一連の合意は、AI計算資源のひっ迫感を和らげる現実解として受け止められる。テキサスの巨大拠点、欧州の三つの軸、そして段階的なGPUの配備。供給網のボトルネックを一つずつ外すための「面の展開」が続く限り、AI時代の基盤づくりは止まらないとみられる。次の一手は、どの地域で、どの規模で打たれるのか。
