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アルゼンチンで2025年10月26日、議会の中間選挙が行われ、暫定開票結果ではミレイ大統領の「自由の前進党（LLA）」が勝利を収めたと伝わる。自由化と歳出削減を掲げる政権への信任が可視化され、経済改革の継続に向けて追い風が吹いた格好である。与野党の勢力図が塗り替わるなか、選挙制度の新様式も相まって、政治の空気感が一段と変わったと映る。
ブエノスアイレスで見えた潮目
投票日の夜、ブエノスアイレス州の集計板に映し出された数字に、人々の視線が釘付けになった。現時点で確認されている範囲では、LLAが同州で得票率41.5％、ペロン党連合が40.8％と接戦を制した。長年、正義党（ペロン党）の地盤とされてきた地域で数字が逆転した意味は重い。街角の反応は静かだが、政治の潮目が変わったという手応えが広がっている。
この一州の差は小さく見えて、大局では大きい。ブエノスアイレス州は人口と議席の重みが突出しており、ここでの勝利は全国の議席配分に波及する。ミレイ氏は就任以来、補助金縮小や規制緩和を矢継ぎ早に打ち出してきたが、厳しい物価高や雇用不安もともなった。そのなかでの勝利は、痛みを伴う改革をなお選び取った有権者の意思を映すものとみられる。
議会の力学が変わる
中間選挙では下院の約半数に当たる127議席、上院の3分の1にあたる24議席が改選対象となった。暫定結果によれば、LLAは下院で64議席を獲得し、改選前の37から大幅に積み増した。絶対多数には届かないにせよ、法案形成の主導権を強め、既定路線の自由市場改革を前に進めるための下地が広がった格好である。野党にとっては、連携の再編を急がねばならない局面が続く。
今回から全国の立法選で初めて「ボレータ・ウニカ・パペル（単一紙票）」が導入された。選挙管理を担う当局が手順や様式を周知してきた経緯があり、投票行動の可視性や集計の透明性を高める狙いがある。制度の変化は有権者の選択行動にも影響を与えうるが、少なくとも今回の結果は、制度変更を乗り越えて有権者の意思が明瞭に表れたと映る。正式確定は今後の公表を待つ必要がある。
経済再建への期待と不安
今回の勝利は、財政規律と市場開放を柱とするミレイ路線への支持が広がったことを示す半面、痛みの分配をめぐる社会の緊張も残した。有権者の間では、急速な歳出削減と補助金縮小が家計に与える負担が語られる一方、長年の慢性的なインフレや投資不足から抜け出すには挑戦が必要だとの声もある。矛盾する期待が同居するなか、政権はスピードと丁寧さの両立を迫られる。
改革の第2幕で問われるのは、議会内の合意形成力と実行の持続性である。為替の安定や物価の落ち着きは生活実感に結びついて初めて支持へ転化する。現時点での暫定結果が確定すれば、政権はより厚い議席を背景に規制改革や歳出見直しを加速させるとみられる。ただし、社会的な合意を欠けば反発も強まる。選挙の熱気が去ったあと、説得と補助線づくりの手腕が試される局面が続く。
