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三菱重工業は2025年12月10日、長崎市の総合研究所長崎地区に設置したアンモニア分解のパイロットプラントで、蒸気を加熱源に用いて純度99%の水素製造に成功したと発表した。アンモニアを介した水素供給を、需要地の近くで回す構想を前に進める。
「運ぶ」の重さを減らす、需要地近接という発想
水素は燃やしてもCO2を出さない一方、気体のまま大量に運ぶのは難しい。そこで注目されるのが水素キャリアであるアンモニアだ。到着後にアンモニアを分解して水素を取り出す工程は「クラッキング」と呼ばれ、NH3をH2とN2に分ける。
経済産業省の資料でも、水素と燃料アンモニアはカーボンニュートラルの柱に位置付けられ、導入拡大の工程表が議論されている。分散型のアンモニア分解が成立すれば、港湾や大規模拠点だけでなく、工場や地域熱需要の近くで水素を確保する選択肢が増える。
蒸気加熱の狙いは小型化と運転コスト、残るのは実装の詰め
今回のポイントは、熱源に蒸気を使う点だ。三菱重工は、バーナー燃焼の熱を用いる従来型と比べて低い反応温度で運転でき、燃焼炉が不要になることで装置の小型化にもつながるとしている。需要地近くに置くなら、設置性と保守の軽さが効く。
同社は、蒸気加熱方式でパイロットスケールの水素製造を行ったのは世界初だと説明した。実証の成功は、アンモニア由来の水素が「作れる」段階から、「必要な場所で作り続けられる」段階へ進む条件を測る入り口でもある。
一方で、分散設置を前提にすれば、触媒の耐久性や運転の安定性、供給先が求める純度管理など、現場の要求は細かい。三菱重工と日本触媒は2025年10月にNEDO事業への採択も公表しており、要素技術の積み上げと事業化の線引きをどこで行うかが、次の焦点になりそうだ。
