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実験装置の前で技術者が周波数ダイヤルを回す。三菱電機が、プラスチックのケミカルリサイクル(化学反応で樹脂を分解し再資源化する手法)で用いるマイクロ波加熱について、世界最高の分解効率を実現する技術を開発したと発表した。周波数の選定と配合の最適化、装置構造の見直しを重ね、従来比5倍の効率と連続運転への道筋を示したという。
周波数を選ぶ発想が効率を変えた
同社はまず、マイクロ波の周波数によって変わる触媒の加熱特性を丁寧に測り込み、最も速く効率よく温度が上がる帯域を選び出した。マイクロ波は物質の電磁特性に応じて吸収が変わるため、同じ出力でも加熱速度や分布は異なる。加熱対象を「周波数で選ぶ」発想が、反応の立ち上がりを大きく変えた。
さらに、プラスチックと触媒の混合比を工程条件と合わせて最適化し、分解反応の効率を引き上げた。ケミカルリサイクルでは触媒の活性点の使い切りや熱の伝わり方が歩留まりを左右するが、両者のバランスを詰めることで従来比5倍という改善を実現したという。工程の安定化にもつながる設計だ。
従来は扱いやすさからISM帯(産業・科学・医療向けの免許不要帯域)の2.45GHzなどが主に使われてきたが、必ずしも触媒や樹脂の吸収が最適とは限らない。対象に合う周波数を選定すれば、同じ電力でも内部から素早く加熱でき、過熱やムラを抑えやすい。結果として投入エネルギーの削減と処理時間の短縮が見込める。
開口のまま止めないための装置設計
マイクロ波方式にはもう1つの壁があった。電波法の遵守のため装置の開口部からの漏洩を抑える必要があり、加熱時は扉を閉じるバッチ式が一般的だった。材料を都度入れ替えるため時間がかかり、装置を止める待ち時間も積み重なる。大量処理では電力と人手のコストが膨らみやすかった。
新技術では、装置内に複数の共振器(特定周波数の電磁エネルギーを強く閉じ込める部品)を配置し、選定した周波数における漏洩を開口状態でも抑える仕組みを確立したという。周波数を厳密に絞ったうえで電磁場を装置内部に束ねる設計により、必要なエネルギーは材料へ、不要な放射は外へ出さない。
開口したまま処理できるなら、材料を連続的に供給して連続的に取り出すフローが描ける。搬送系と組み合わせれば段取り替えのロスが減り、一定条件で反応を維持しやすい。バッチを前提とした付帯動作を削り、熱の立ち下がりを抑えることは、結果として分解効率と設備稼働の双方を押し上げる。
低コスト化と実装に向けた視界
マイクロ波を使うケミカルリサイクルのコストを押し上げてきたのは、加熱に要する時間と電力だ。周波数選定で材料を素早く温め、連続運転で段取りの無駄を削れれば、単位量あたりのエネルギー原単位は下がる。設備のスループットも上がり、装置当たりの処理能力を底上げする余地が広がる。
一方で、実機スケールでの安定運転や、投入材のばらつきへの強さなど、量産工程特有の課題は残る。法令に沿った電波管理や安全対策の運用も欠かせない。現場での検証とデータの蓄積を通じ、触媒の寿命やメンテナンスの頻度を見極めていく段階だとみられる。社会実装はここからが勝負どころだ。
同社は家電プラから高純度の樹脂を回収する分別・再生の基盤を育ててきた実績がある。社内外のリサイクル網と連携し、化学分解の工程を選択肢として組み込めれば、用途や品質に応じた循環の幅は広がる。分ける力と分解する力の両輪が、再生材の使い道を静かに押し広げていく。
