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モルドバで議会選が行われ、与党「行動と連帯（PAS）」が優勢を保ち、親ロシア派の連合を退けた。開票がほぼ終盤に達した段階で、PASは50.03%、野党「愛国ブロック」は24.26%となり、EU志向の路線継続に弾みがついた。首都キシナウでは静かな緊張が漂うなかで支持者が結果を見守り、選挙は同国の進路を左右する節目となった。
PASが過半数維持、EU路線に追い風
中央選挙管理委員会のほぼ確定値では、PASが50.03%、親ロシア派の「愛国ブロック」が24.26%となった。2025年9月29日、現地から伝えられた集計は、単独過半数を維持した与党の手堅さを裏付け、政権の交渉余地を広げた。野党支持者の間に失望の色は残るが、街の空気は落ち着きを取り戻しつつある。
モルドバはEU候補国となり、制度改革と統合作業を急ぐ。議会は101議席の一院制で、政府は汚職対策や司法の信頼回復を急務としてきた。今回の結果は、隣国ウクライナ情勢の影響を受けつつも欧州寄りの選択が根強いことを示した。投票所では若い世代の姿も目立ち、変化への期待が息づいていた。
PASの得票は前回の52.8%から50.03%へとやや下げた。それでも野党側の分散と閾値の壁が働き、議会運営の主導権は維持された。与党関係者は「改革の加速」を誓い、反汚職とエネルギー安全保障を先頭に据える構えだ。市民の視線は、約束が現実の制度に落ちる速度へと向かう。
選挙戦を覆った介入疑惑と情報戦
選挙期間中は偽情報の流通や買収への疑い、サイバー攻撃や爆破予告までが報告され、投票日の空気はざわついた。政府関係者は、国外からの情報操作が有権者の判断を揺さぶったと警戒し、治安当局は混乱の芽を抑え込む姿勢を強めた。SNSやメッセージアプリには断片的な情報が渦巻き、真偽の判別が追いつかない場面もあった。
EU機関や選挙監視団は、情報空間への組織的な干渉の懸念を繰り返し伝えてきた。OSCEの選挙監視ミッションは2025年9月29日に暫定評価を公表する予定で、投票日の運営や計数の過程、メディアの偏りなどを検証する構えだ。現時点で確認されている範囲では、投票自体の進行は維持されたが、情報面の攪乱が選挙環境に影を落とした。
一方、モスクワは関与を一貫して否定した。愛国ブロックを率いる元大統領イゴール・ドドン氏は不正を主張し、議会前での抗議行動を呼びかけたが、証拠の提示には至っていない。緊張は残るが、街は静けさを取り戻しつつある。結果を受け入れる空気と、不正を糾すべきだという感情がせめぎ合い、社会の分断線が再び浮かび上がった。
次の焦点は組閣と改革、国内の割れ目
結果が定着すれば、与党は組閣と政策遂行の体制固めに入る。生活費の重さとエネルギー価格の揺れ、旧来の利権構造の影、そして沿ドニエストルやガガウジアに根強い対立感情が、政権の足元を試す。国外在住者の投票動向も今後の鍵となる。欧州志向と伝統回帰のあいだで、社会の温度差はなお大きい。
政府は2030年の加盟を見据え、司法や行政の刷新を掲げる。物価上昇率は約7%と重く、家計と企業の負担を和らげる支援の持続が問われる。治安や情報防衛といった「目に見えにくい安全」の強化も不可欠で、政権は制度改正と投資を織り交ぜた総合策で信頼の上積みを狙う。
議席配分はドント方式で決まり、一定の得票に届かない勢力の票が大党に再配分される。政党は5%、選挙ブロックは7%の閾値を越える必要があり、今回もこの仕組みが与党に有利に働いた面がある。制度の中身が政治地図を左右する現実を踏まえ、野党も地域基盤と政策の再編に向き合う局面に入った。
