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モレリアの中心部で叫びが重なった。「虐待と怠慢はもうたくさんだ」。2025年11月1日、ミチョアカン州ウルアパンのカルロス・マンソ市長が「死者の日」の行事中に射殺された直後、抗議は州内各地へ広がり、行政施設への侵入や放火へとエスカレートした。治安と暮らしの綻びが、街路で露わになった。
怒りが街路へあふれたモレリア
2025年11月2日、州都モレリアでは、白い花とろうそくを手にした市民の列が中心街へ進んだ。掲げられたスローガンは、長く積み重なった不安と怒りの表現だった。行進の終盤、緊張は一気に高まり、一部の参加者が州政府宮殿の扉をこじ開けて内部へなだれ込んだ。
室内では机や窓が壊され、壁には「正義を」「もうたくさんだ」と求める言葉が残った。警察は催涙ガスで排除に動き、若者らを取り押さえた。混乱の最中、記者らが取材中に負傷する場面もあり、非日常の光景が歴史的中心区の石畳に刻まれた。
地元報道によれば、混乱の2日間で少なくとも8人が当局に引き渡された。静かに歩き始めた列が、怒号と破片の音に変わるまでに要した時間は短かったが、そこに至るまでの苛立ちは長い年月で蓄えられたものだった。
標的となった首長と、果実の産地の不安
引き金は、2025年11月1日の銃撃だった。行事を終えた直後に狙われたマンソ氏は搬送先の病院で死亡し、現場では容疑者1人が射殺、2人が拘束された。照明と音楽が残る広場に、断ち切られた市政の時間が露わになった。
同氏は犯罪組織への強硬姿勢で知られ、就任後は警備の強化も進めていた。農産物の集散地として知られる地域では、犯罪集団による恐喝や通行の支配が絶えず、収穫から輸送にいたる現場の緊張は慢性化している。治安は暮らしと産業の土台に直結する。
人々が掲げたプラカードには、政争ではなく日々の安全を求める切実さがにじんだ。農園や加工場、道路の安全が揺らぐと、家計も誇りも脅かされる。街路の声は、制度の隙間にこぼれた生活の破片を拾い集めるように続いた。
火の手が上がったアパツィンガン、当局の応答
連鎖は他の町にも及んだ。2025年11月4日、アパツィンガンでは市庁舎の焼損が確認され、怒りの波は行政の象徴をも飲み込んだ。市域の外へ逃れる住民が出るほどの治安不安は、静かな夜を奪い、日常の移動や商いを細らせている。
一方、連邦政府は治安戦略の継続と強化を掲げ、州内に焦点を当てた新たな治安計画を公表した。国家治安部門や検察の連携強化、自治体トップへの警護体制の見直しなどが柱とされ、暴力の根を断つ長期策と即効策の両立が模索されている。
検察は動機と背後関係の解明を進めているが、捜査の詳細は限られる。人の流れが戻った広場には、焼け跡と割れたガラス越しに、静かな午後がふたたび差し込んだ。抗議で上がった声は薄れつつも、人々の胸のうちで脈を打ち続けている。
