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24日未明、韓国西岸の軍事空域で、米軍の無人機運用に思わぬブレーキがかかった。群山空軍基地に常時配備されている米空軍の無人機「MQ-9リーパー」1機が、通常任務中に黄海上へ墜落したのである。米空軍は、機体はマルドリ島付近で事故に遭ったと明らかにし、人的被害や地上の物的損害は確認されていないとしているが、就役して間もない飛行隊の象徴的な装備を失った衝撃は小さくない。
新編の第431飛行隊、初期運用期に直面した試練
墜落したMQ-9は、韓国・群山空軍基地に置かれた第431遠征偵察飛行隊が運用していた。同飛行隊は第8戦闘航空団の一部として2025年9月に新編され、インド太平洋地域での前方プレゼンス強化を象徴する存在とされてきた。米空軍によれば、24日の事故は現地時間午前4時35分ごろ、通常任務中に発生し、機体はマルドリ島近海の黄海上に落下した。事故原因は現在も調査中で、技術的要因があった可能性も含め、米韓両軍が慎重に経緯を検証している。
今回の墜落では、周辺住民の負傷や建物被害は報告されていないと米側は強調する。一方で、新たに配備されたばかりの高価な無人機が早期に損失した事実は、部隊の士気や運用計画に見えない影を落とす。9月の声明で米空軍は、韓国配備のMQ-9が米韓の情報収集・監視・偵察の優先課題を支えると説明していた。北朝鮮情勢に加え、中国軍の活動が活発な海域にも目を配る役割を託された飛行隊にとって、今回の事故は「立ち上がり期」に試される最初の難題となっている。
広がる監視範囲と高まる期待、無人機運用のリスク
MQ-9リーパーは、無人の単発ターボプロップ機で、長時間滞空しながら偵察や攻撃任務をこなせるのが特徴だ。航続距離は約2575キロ以上とされ、空中給油を受ければ事実上、連続飛行時間に上限がないとされる。群山基地から北へ約240キロには南北の非武装地帯（DMZ）があり、約1290キロ圏内には東シナ海や台湾も含まれるほか、中国本土や渤海も監視範囲に入る。米空軍のファクトシートによれば、機体にはマルチスペクトル光学センサーに加え、ヘルファイア対戦車ミサイルなど各種兵装を搭載でき、偵察と攻撃を一体で担う「多任務プラットフォーム」と位置づけられている。
この能力を背景に、米空軍は9月の声明で「MQ-9の運用はインド太平洋地域における米韓の情報収集・監視・偵察の優先事項を支援する」と述べ、北朝鮮だけでなく周辺海域の動向把握にも役割を持たせる考えを示してきた。しかし、無人機だからといって事故リスクが消えるわけではない。米議会調査局が2022年にまとめた報告書は、MQ-9が有人軍用機に比べて、損害額250万ドル超の「クラスA事故」が約15%多いと指摘し、平均取得単価を約2800万ドルと試算している。今回の黄海での墜落は、地域の監視網を支えるはずの装備が、運用の難しさとコストの重さという別の現実も抱えていることを静かに示している。
静かな海に沈んだ1機の無人機は、姿を消したあとも、遠隔で戦場を見つめる時代の利点と脆さの両方を、しばらくのあいだ周辺国の記憶に残し続けそうだ。
