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朝の名古屋駅近くで、横断歩道に軽乗用車が突っ込み、歩行者3人が死傷した。運転していた71歳の男は「人にぶつかっていない」と否認している。警察は2025年10月16日に危険運転致死傷の疑いで送検し、進入経路や速度の状況を詳しく捜査している。混雑する駅前で何が起きたのか。現時点で判明した事実をたどる。
朝の横断歩道で何が起きたか
事故が起きたのは2025年10月15日 7:40ごろ、名古屋市中村区の名古屋駅近くにある名駅南1丁目の交差点である。通勤客や買い物客が行き交う時間帯、駐車場から出たとみられる軽自動車が横断歩道を渡っていた人の列に向かった。歩行者は男女3人で、現場は一時騒然となったとみられる。
3人は救急搬送され、うち49歳の女性が死亡した。残る2人は36歳の男性と48歳の女性で、骨折を伴う重傷と伝えられている。朝の駅前で突然起きた強い衝撃に、周辺の通行が規制され、道路には破片が散った光景が残った。救助と検分が続く間、人々の足は重く、ざわめきだけが広がった。
運転していたのは名古屋市の鳴海洋容疑者(71)で、警察は当初、自動車運転処罰法違反(過失運転致傷)の疑いで現行犯逮捕した。鳴海容疑者は「人にぶつかっていない」と供述し、容疑を否認している。警察は当時の信号の状況や走行ラインなど、基本的な事実関係の確認を進めている。
見えてきた進入経路と速度の手掛かり
現時点で確認されている範囲では、車は駐車場の出入口につながる出入路から交差点へ進入した可能性が高い。歩行者が横断中の横断歩道に向けて直進し、次々とはねた結果、3人が死傷した構図が浮かぶ。朝の駅前で車と人の動線が交錯する地点で、わずかな判断の遅れや見落としが重なると被害が拡大しやすい。
事故直後から警察は、防犯カメラや車載機器の映像、ブレーキ痕の有無など物証を集めている。当時の信号表示、車の進入角度、歩行者の位置関係がどうだったのかが焦点である。現場特有の死角や視認性、車線の形状も、速度の評価と合わせて過失の程度や故意性の判断に影響しうるとみられる。
10月16日、警察は容疑をより重い危険運転致死傷へ切り替え、鳴海容疑者を送検した。一部報道では、交差点を曲がれないほどの速度で走行していた可能性があるとされる。供述は依然として否認だが、物理的な解析結果や医学的所見、運転前後の行動記録の突き合わせが進むにつれ、走行の実態が明らかになっていくとみられる。
駅前という生活圏で突き付けられた課題
現場は名鉄バスセンターの出入口に近く、オフィスや商業施設が密集する生活圏である。朝の時間帯は人の波が横断歩道に連なり、車両は駐車場や側道から本線へ合流する。信号待ちの焦燥や視界の途切れが起きやすく、歩行者と車の注意力にわずかな綻びが生まれただけで重大事故へ傾きやすい構図があると映る。
今回の運転者は71歳であったが、年齢だけで原因を断じることはできない。体調、睡眠、服薬、視認性、交通の密度、案内表示の配置など、複数の要素が複合して危険につながる。高齢運転の課題を個人の資質に還元せず、環境側の安全余裕をどう確保するかという視点が欠かせないと感じる。
交差点の出入口配置や右左折時の速度管理を支える設計、歩行者側の待避スペースや見通しの確保、信号・表示の分かりやすさの改善など、具体策は多い。捜査の進展を待ちながら、都市のど真ん中で起きた死傷事故を丁寧に検証し、次の朝に同じ悲しみを生まないための対策を社会全体で積み上げたいところである。