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秋晴れの取引所で板がせわしなく入れ替わる。稼働中の原発ゼロ、売上ゼロ、規制認可ゼロの米ナノ・ニュークリア・エナジーに資金が殺到し、時価総額は20億ドル超へ膨らんだとみられる。背景にあるのは、人工知能(AI)が飲み込む電力への期待である。一方で、目の前の電力ひっ迫と長い認可手続きという現実が交差し、熱狂と常識のせめぎ合いが広がっている。
AIが引き寄せた期待と、走り出したマネー
ハイテク大手が世界各地でデータセンター建設を急ぎ、電力契約価格は上昇している。生成AIの学習・推論に必要な新電源の確保は喫緊の課題と映る。投資家の視線は、カーボンフリーで稼働率が高い原子力に集まり、小型炉やウラン燃料関連まで一気に物色が広がった。原子力は未来のベース電源という物語が、マーケットを牽引している構図である。
こうした熱を最も強く浴びたのが次世代の小型炉である。AIが生む「電力は今すぐ要る」という需要の物語は説得力を持つが、その資金の行き先は完成前の設計や青写真にとどまる案件が多い。足元での高い期待が、実装までの距離を短縮してくれるわけではないという冷静な見方もにわかに増えている。
収益ゼロ、認可ゼロ—それでも買いが集まる理由
ナノ・ニュークリアは自社の年次報告書で、創業以来の売上高はゼロで、累積損失は1,740万ドルに達したと記した(2024年12月27日公表)。同社はマイクロリアクターの設計・実証、HALEU燃料や輸送の垂直統合を掲げるが、現時点で商業運転中の原子炉はない。投資家は「将来の電源候補」に対価を先払いしている構図が浮かぶ。
同報告書は、ライセンス取得や商用化の道筋も明かした。実証は2025〜2027年、NRCによるライセンス審査は2026〜2029年、商用投入は2030〜2031年と見込むという。すなわち、規制のゴーサインはまだ先であり、許認可・資金調達・技術成熟という三重の関門が横たわる。にもかかわらず資金が流入するのは、AIと脱炭素の二つの潮流が背を押すからだと映る。
データセンターの渇望と「今すぐ電力」という矛盾
AIの普及で、需要家は即応性の高い電力を求める。大規模クラウド事業者は短期に確実な供給を手当てするため、既存の火力・再エネの上積みや越境調達まで検討を広げていると伝えられる。他方で、新しい原子力は着工から系統接続まで年単位を要し、近視眼的な需要のタイムラインとは重なりにくい。速度の不一致がにわかには解消しない。
一部のアナリストは、バリュエーションの先走りを警戒する。熱狂は需給の論理を補強するが、プロジェクトファイナンス、サプライチェーン、建設コスト、そして規制の確実性が欠ければ、需要の波に乗れないと指摘する声が出ている。目の前の電力ひっ迫に対する解ではない、という冷や水が浴びせられている状況である。
2030年代の現実線—規制と燃料が握る鍵
小型炉の成否を分けるのは、NRCの審査と燃料の目処である。ナノ・ニュークリアはINL周辺でのHALEU燃料製造や輸送体制の構築を掲げ、垂直統合でリスクを包摂する戦略を示している。だが、年次報告書が自ら認めるように、当面は赤字と追加資金調達が続く見通しだ。規制の確度と燃料供給の現実性が、物語を現金化できるかを左右する。
投資家の問いは単純である。誰に有利なのか、偶然なのか必然なのか。AIの電力需要という強い潮流は確かだが、新しい原子力がその波頭に乗るには、2030年代の早い段階で実証・認可・供給の三拍子を揃える必要がある。熱狂が冷めたあとに残る資産は何か。いずれ常識が勝つ局面で、基礎に立ち返る判断が試されている。