ナイジェリア・アブジャ大統領が准将の戦死を認定、ISWAPに待ち伏せ殺害

2025.11.19

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アブジャの大統領府が沈黙を破ったのは、前線で将官が消息を絶ってから数日後だった。ボラ・ティヌブ大統領は2025年11月18日、イスラム過激派組織イスラム国西アフリカ州（ISWAP）との戦闘任務に就いていたムサ・ウバ准将が死亡した事実を公式に認め、声明で「戦場で倒れた兵士と将校の死を深く悼む」と述べた。胸章に星を付けた指揮官が過激派に待ち伏せされ殺害されたことは、長引く反乱の重さを改めて浮かび上がらせている。

否定から認定へ、将官死亡を巡る数日の揺れ

今回の一連の出来事は、ISWAP側の発表から始まった。同組織は11月17日、数日前に北部チャド地域でナイジェリア軍の上級将校を待ち伏せし殺害したと主張し、ムサ・ウバ准将とされる写真を公開した。声明では、同准将が脚に傷を負い逃走を試みたところを拘束したとも記している。一方でナイジェリア軍は当初、この待ち伏せで准将が捕らえられたとの報道を否定し、混乱のなかで真偽不明の情報が飛び交う状況が続いた。

しかし前線からの断片的な証言は、事態の深刻さを示していた。北東部ボルノ州ダンボア周辺で部隊がISWAPに奇襲され、少なくとも兵士2人と自警団員2人が死亡したと軍や国連の報告で伝えられている。その後、ウバ准将が一時的に敵の包囲を抜け、上級部隊と通信しながら救援を待っていたこと、位置情報を送信したのち連絡が途絶えたことなどが、ナイジェリアの複数メディアによって報じられた。軍の公式声明と現場証言の間には溝があり、大統領による死亡確認は、その溝を埋める苦い形となった。

ティヌブ大統領は声明で、ウバ准将の名を挙げて遺族への弔意と加護を祈り、「英雄」と呼んで称えたとされる。将官クラスがイスラム過激派の待ち伏せで戦死したのは、2021年11月にボコ・ハラム掃討作戦中に命を落としたザルマ・ジルクス将軍以来とされ、今回の死は軍の士気にも少なからぬ衝撃を与えている。表向きの言葉とは別に、政権にとっては治安対策の成果を問われる出来事でもあり、大統領のメッセージには前線部隊への連帯と世論への説明責任の両方を意識した響きがにじむ。

ISWAPと続く反乱、その中で失われた一人

ウバ准将が倒れた戦場は、15年以上にわたり紛争が続く地域だ。2009年以降、ボコ・ハラムとその分派による反乱で数万人規模の死者が出ており、家を追われた人びとは周辺国も含め数百万人にのぼると国連などは推計する。ISWAPは2016年にボコ・ハラムから分かれて以降、軍や治安部隊を主な標的とする路線を強め、チャド湖周辺や国境地帯で機動力の高い小部隊による攻撃を繰り返してきた。ナイジェリア北東部の町や村では、こうした襲撃と軍の掃討作戦が幾度も重なり、日常と暴力が隣り合う状態が今も続いている。

近年は過激派同士の争いも激しさを増している。2025年11月上旬にはチャド湖の島々でボコ・ハラムとISWAPの大規模な衝突が報じられ、多数の戦闘員が死亡したとされる。勢力の地図が揺れるたびに、軍は新たな前線構築を迫られ、補給路や通信線は常に危険にさらされる。こうした環境下で旅団長クラスの指揮官が前線近くに身を置くことは、部隊の士気向上につながる一方、標的として狙われるリスクも高まる。ウバ准将もまた、長年この地域で戦ってきた歴戦の歩兵指揮官だったと同僚は証言している。

ISWAPが公開した写真や動画は、戦闘の詳細よりも、国家と武装勢力の間で情報が武器として使われている現実を物語る。将官の身柄をめぐる発表が二転三転した数日のあいだ、前線では救出作戦が続き、最終的に間に合わなかったとみられている。一人の指揮官の死は、統計のなかの「数」に埋もれがちだが、その背後には長期化する反乱と、日々危険に向き合う多くの兵士と市民の時間が積み重なっている。その名を知る人は限られていても、ウバ准将の最期は、この地域で続く戦いの終わりがまだ見えないことを静かに示している。

否定から認定へ、将官死亡を巡る数日の揺れ

ISWAPと続く反乱、その中で失われた一人

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