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経済同友会は2025年9月30日、サプリメントを巡る警察捜査の対象となっていた新浪剛史氏が代表幹事を辞任すると申し出、同日開催の理事会で受理したと発表した。経済三団体の要職が捜査の渦中で退くのは異例で、経済界のガバナンスと社会的信頼の両立が改めて問われる局面となった。
辞任の決断、その場で何が起きていたか
都内で開かれた理事会ののち、岩井睦雄代表幹事代行が会見に臨み、続投の可否をめぐる議論が「真っ二つ」に割れ、十分な合意形成に至らなかったと説明した。新浪氏はその報告を受け、組織の分裂を避けるため自ら身を引くと申し出て、受理に至った経緯を語った。
会見に同席した新浪氏は、理事会の正式審議からは外れつつ、意見表明の機会として発言したと明かした。自ら申し出ることで事態の収束を図り、「最後に代表幹事らしい仕事ができた」と述べ、混乱の拡大を避ける判断だったと強調した。
理事会では方針の一本化が難航し、時間の経過とともに意見の隔たりがむしろ鮮明になったという。新浪氏は次の職務について複数社からの打診があることを説明し、その後の審理は当人を除いて進められた。結論は辞任受理で固まり、場は静かに閉じた。
審査が見つめた資質、割れた視線
同友会は2025年9月11日、会員倫理審査会を設置し、代表幹事の適切性を検証した。審査会は理事4人と監査役1人で構成され、資格要件の解釈や組織の規範と照らし合わせて検討した。議論の柱は、現役経営者でない点をどう評価するかという難題だった。
一部では、長年の実績や対外発信で果たしてきた役割を重視し、続投の意義を指摘する声があった。他方で、要件との整合性を優先すべきだとする意見も根強く、どの尺度で判断するかで見解が割れた。最後まで結論は交わらず、緊張が会議室に残った。
背景には、8月に米国で購入したサプリメントを知人経由で国内に送らせようとした疑いがある。福岡県警が捜査する事案で、本人はCBD製品として適法だと主張してきた。現時点で確認されている範囲では立件に至っておらず、評価は揺れ続けていた。
広がる余波と残る肩書、これからの行方
代表幹事の不祥事を契機とする辞任は、経済同友会にとって極めて異例である。経済三団体の一角がこうした形で指導者交代を迫られる事態は重く、社会の信頼と対話を担う民間団体のあり方が、思いがけない角度から突きつけられたと言える。
新浪氏は2025年9月10日付で公益財団法人・日本生産性本部の理事も辞任しており、政財界での影響力低下は隠せない。もっとも、同友会には会員として残る意向を示し、経済財政諮問会議の民間議員については辞めるつもりはないと明言した。
後任の代表幹事や執行体制の立て直しは、今後の理事会で協議が進む見通しだ。経済界の発信をどう再構築し、社会との信頼をどう回復するのか。人事の先にあるのは、危機の教訓を規範へと刻み、持続的に機能するガバナンスを示せるかどうかである。
