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屋根の上で静かに伸びるパネルが、日常の走りを少しだけ自由にする。日産自動車は2025年10月22日、軽EV「サクラ」に太陽光発電システムを載せた試作車を公開し、10月30日開幕のジャパンモビリティショー2025に出展すると発表した。年間約3000キロ相当を賄える見込みで、充電の手間と費用を減らす一手となりそうだ。
屋根が伸びる、止まって稼ぐ
走行を終えて車体が止まると、屋根のパネルがすっと前方へ伸びる。開発中のスライド式太陽光発電システムは停車時に表面積を拡張し、自動でバッテリーへ充電する構造である。報道では、走行中は約300ワット規模の発電が見込まれ、停車時にはそのおよそ倍の出力となると伝えられている。いわば「走りながら補い、止まって稼ぐ」仕組みが、EVの日常を下支えする姿が浮かぶ。
この試作は、近距離移動が中心の軽EVの実情を踏まえている。買い物や送迎が主な使い方であれば、年間約3000キロ相当の発電量でも普段づかいの多くをカバーでき、外部充電の頻度を大きく落とせるとみられる。家庭の電源や充電器に縛られない移動の選択肢は、EVの「手間がかかる」という印象をやわらげ、所有体験の質を底上げする狙いがにじむ。
停車中にこそ力を発揮するという特性は、非常時にも生きる。電力インフラが揺らぐ場面で、車両が小さな発電所として地域や家庭を支える可能性があるからだ。企業側は「ユーザーの反応を今後の開発に役立てたい」との構えを示しており、充電のストレスを減らしながら、暮らしの安心にも寄与する技術としての磨き込みが進むと映る。
会場で確かめたいこと
お披露目の舞台は、東京ビッグサイトで10月30日に幕を開けるジャパンモビリティショー2025である。11月9日までの会期中、幅広いモビリティが集う会場で、この軽EVが示す「日常発電」という新しい便利さを体感できる見通しだ。出展各社の技術が交差する場で、「止めて発電する」という思想がどこまで実用に近づいているのか、来場者の視線が集まりそうだ。
一方で、現時点で確認されている範囲では、価格や発売時期は未定である。最終的な出力仕様や重量、耐候性、保守性といった要素も気になる。発電量は天候や設置環境、駐車時間に左右されるため、利用者の走行パターンに応じて効果が変わる点は織り込む必要があるだろう。名称については「Ao-Solar Extender」と紹介する報道もあるが、一次資料での正式表記は今後の発表を待ちたいところだ。
それでも、軽自動車サイズの車体に発電機能を重ねる発想は、都市の暮らしに合う省スペース解を提示する。駐車場という「止まる時間」を資源化し、移動の自由とコスト低減を両立させる提案は、EVの弱点を丁寧に埋めていくアプローチに映る。小さな屋根がどれだけ日常を動かせるのか。会場での実機とユーザーの声が、次の一歩を形づくるはずだ。
