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北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が、空軍に「新たな戦略的軍事資産」を与えると宣言した。朝鮮中央通信によれば、11月28日に行われた空軍創設80年の記念行事で表明し、空軍が核戦力の抑止に重要な役割を担うと強調した。上空を巡る力の均衡が変わる可能性があり、朝鮮半島と日本周辺の安全保障にどんな意味を持つのかが問われている。
空の「戦略資産」がもたらす揺らぎ
記念行事は東部のカルマ空港で開かれ、金氏は空軍に新たな戦略資産と任務を与えると表明したと韓国紙コリア・ヘラルドなどが伝える。ロイター通信によれば、会場には無人機や移動式発射台、早期警戒機とみられる機体が並び、空軍を核抑止の一翼として位置付け直す意図が示された。内容が伏せられたままの「新資産」は、日本や韓国の防空態勢にも影響しうる。
北朝鮮は近年、小型の自爆型無人機や中距離攻撃ドローンを量産しているとされ、9月にはAIを活用した無人兵器の開発と量産を最優先課題としたとKCNAが報じた。滑走路やレーダーを多数の安価な無人機で狙う発想はウクライナ戦争で顕在化した。弾道ミサイル中心だった脅威像に、低空から迫る「群れ」の攻撃が重なる。
日本では、北朝鮮の発射に伴うJアラートや航空機の迂回が日常風景になりつつある。空軍の無人機や早期警戒機の活動が増えれば、探知のためのレーダー監視や戦闘機のスクランブルも増し、住民がサイレンや防災無線にさらされる機会は一段と広がりうる。空の緊張は、まず足元の生活時間を細かく刻む。
無人化と核抑止、変わる空軍の役割
北朝鮮軍は長距離砲とミサイルで知られる一方、戦闘機や訓練体制の老朽化が指摘されてきた。その弱点を補う形で進むのが、空軍への「戦略資産」付与だ。衛星写真分析では今年初めから早期警戒管制機とみられる機体の改造が進んでいるとされ、完成すれば周辺空域の監視と指揮統制能力が一段と高まるとの見方がある。
9月には金氏が無人機とAI技術を組み合わせた兵器体系の強化を「最優先」としたと各紙が伝えた。AIで自律飛行し目標を自動認識する無人機が大量に配備されれば、従来のレーダーや迎撃ミサイルだけでは対応しきれない。韓国や日本は、電波妨害やサイバー対策、近距離用の対ドローン兵器など、多層的な防空網を急いで整える必要に迫られている。
とはいえ、北朝鮮がどの程度の規模で新資産を導入できるのかは不透明で、老朽インフラや燃料事情という制約も残る。誇示的な示威行動にとどまるのか、実際に沿岸や国境付近に常時展開するのかで、周辺国が払うコストも変わる。本当に変わるのは装備そのものより、空をめぐる「当たり前」のリスク感覚なのかもしれない。
