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マイクを握った島田明社長の隣に、東大発スタートアップOptQCの高瀬寛社長が並んだ。2025年11月18日、NTTは両社と組み、27年に1万量子ビット規模(量子情報の最小単位の数)、30年には100万量子ビット規模の光量子コンピューター実現を目指すと発表した。極低温や真空を必要とする現在の量子計算とは異なり、常温・常圧で動く新しい計算基盤を社会に届けようとしている。
常温で動く量子計算機へ 5年で土台づくり
両社が目指す光量子コンピューターは、電気ではなく光の粒子である光子に情報を載せて計算する仕組みだ。多くの量子コンピューターが超伝導素子を極低温で冷やして動かすのに対し、光なら常温・常圧でも扱いやすく、消費電力も抑えられるとされる。NTTは光で通信や計算を行う次世代通信基盤構想IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)のもと、光増幅や光多重化、量子誤り訂正の技術を磨いてきた。
協業では、まず光を多数同時に扱う多重化や誤り訂正の技術、用途に応じたアルゴリズムやソフト、供給網や社会実装の在り方までを含めて四つの柱で研究する。今後5年間で、初年度に技術検討とパートナーとの連携、2年目に開発環境の構築、3年目に活用事例の検証を進める計画だ。27年ごろに1万量子ビット規模に到達し、30年までに100万量子ビットへ拡張することで、通信や交通、エネルギーの最適化など膨大な計算を短時間でこなす土台を築こうとしている。
研究者とスタートアップが組む理由 広がる計算の可能性
光の計算機を支えるのは、人材と資金だ。島田社長は会見で、量子関連の研究者を数十人規模で投入し、アプリケーションなど周辺技術も含めたエコシステムを築くと語った。対するOptQCは、東京大学で約25年続いた光量子計算の基礎研究から生まれた企業で、常温常圧で動く光量子コンピューターを世界に先駆けて試作してきた。高瀬社長は今後5年で社員をおよそ100人に増やし、150億〜300億円の資金調達に挑む考えを示している。
NTTはすでに、IOWNの研究の中で、光増幅を量子光源として応用し従来比1000倍以上高速な量子もつれ生成を実証している。この延長線上で1万量子ビットが実現すれば、都市の交通制御や送電網の運用といった複雑な最適化の計算時間を、数日から数分にまで縮められる可能性があるという。100万量子ビットまで進めば、空気中の窒素から少ないエネルギーで肥料を作る条件探索など、これまで現実的でなかった計算にも射程が広がる。量子通信とIOWNのネットワークを組み合わせた地球規模の計算網という構想は、静かに現実味を帯び始めているように見える。
