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NTT東日本とNTT西日本が2025年9月29日、メタル設備を使う固定電話（加入電話）を、光やモバイルを用いた代替サービスへ段階的に移行すると発表した。同時に、加入電話の基本料を2026年に改定する方針も示した。長く暮らしを支えた「銅線の電話」は節目を迎えるが、固定番号は形を変えて生き続ける。
何が決まったのか—固定電話の“次の居場所”
発表の核は、老朽化したメタル設備の維持が2035年頃には難しくなるという見通しである。加入電話の利用はピークから大きく減り、通話需要も縮小してきた。このままでは修繕や部材調達、人員確保などの負担が増し、全国で同じ品質を保つのが厳しくなる。そこで光とモバイルに土俵を移し、固定番号の安心を次の世代の網に載せ替える設計だ。
代替の柱は3つ。自宅まで光ファイバーを引いて番号を載せる「光回線電話」、携帯網を使って自宅の電話機をつなぐ「ワイヤレス固定電話」、そしてフレッツ光と組み合わせる「ひかり電話」である。光回線電話は2025年10月1日に全国提供を始める予定で、移行にかかる初期費用は無料になる。使い慣れた電話機と番号は基本的にそのまま引き継げる。
ワイヤレス固定電話は、携帯圏内で固定電話機を使える仕立てで、準備が整い次第提供を広げる。山間部や半島部、離島など、銅線の維持が著しく非効率な地域では実装の効果が大きい。固定電話の「置き場所」は変わっても、家のベルが鳴る体験は変えない—2社はそう位置づける。
いつ何が変わるのか—段階的な移行と料金改定
移行は一斉ではない。まずは老朽化が進み保守に支障の出るエリアや、被災で再敷設が必要になった地点など、ごく一部から先行する。書面での案内と相談窓口の整備を合わせ、現場での手当てと周知を並走させる。番号や宅内機器の扱い、連絡手段の確保など、生活の動線を崩さないことを前提にする構えだ。
その後は、エリア単位で段階的にサービスを整理していく。運用状況や準備の進捗に応じて、2028年度頃から終了計画を順次公表し、個別に移行提案を進める流れになる。地域の事情に応じたテンポで移すため、住民への告知はエリアごとに丁寧に行うとしている。
最終盤は2035年度中の完了をめどとする。設備投資の計画と、代替サービスの受け皿整備を重ね合わせ、空白を生まないように進める設計だ。移行の旗を掲げながらも、移行までの期間はメタル設備の保守を怠らず、品質確保に必要な更新を続けると説明する。
料金面では、加入電話とライトプランの基本料を2026年4月1日利用分から見直す。事務用は月額330円、住宅用は月額220円の値上げとなる。利用減と設備老朽化のなかで、安全対策や復旧体制の維持に要する費用を踏まえた判断だ。代替となる光やモバイルの固定系サービスの基本料は据え置く方針である。
暮らしへの影響と備え—番号はそのまま、詐欺に注意
移行には申し込みと工事が必要だが、加入電話から光回線電話やワイヤレス固定電話に移る初期費用は無料となる。フレッツ光とひかり電話に切り替える場合には、一定期間の月額割引などの施策も準備されている。移行の手続きや開通時期は住環境で異なるため、余裕を持って相談したい。
機器面では、一般的な家庭用電話機は代替サービスでも利用できる。ただし、ISDN対応端末やG4FAXなど一部は動作に制限が出る可能性がある。ナンバーディスプレイや転送などの付加機能は、光やモバイルのメニューで提供されるため、必要な機能の有無をあらかじめ確認しておくと安心だ。
案内を装う悪質な勧誘や詐欺にも注意が要る。エリアの終了時期はNTT東日本・西日本から書面などで知らせる。移行の連絡を受けたら、専用サイトやコールセンターで真偽を確かめるのが安全である。工事費無料や割引の条件は公式の案内に基づくため、第三者の口頭説明だけで契約を決めない姿勢が大切になる。
要は、銅線の世代から光と電波の世代へ、固定番号の“居場所”を静かに移す長い旅路だ。家の電話は、形は変えながらも、これまでと同じように呼び出し音で人をつなぐ。その橋渡しを滞りなく進めるために、今できる準備を一つずつ整えていきたい。
