続く避難生活を支える寄付の力　佐賀関火災で相次ぐ支援の申し出

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2025.12.01

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11月18日に大分市佐賀関で起きた大規模火災は、住宅を含む182棟が焼失し、今も100人を超える人々が避難所で夜を明かしている。被災地には、非鉄大手や地元出身の経営者、人気配信者らから巨額の寄付や宿泊施設の提供が相次ぐ。だが、こうした支援の波が、長引く避難生活の不安をどこまで和らげ、暮らしの再建にどう結び付いていくのかは、まだ手探りの段階にある。体育館の床に並ぶ段ボールベッドの傍らで、住民たちはニュースに流れる「寄付」の行方を静かに見守っている。

避難生活と寄付のあいだにある距離

今回の火災は、地震を除くと約半世紀で最大規模の都市火災とされ、漁師町として知られる佐賀関の街並みを一変させた。住宅や商店が焼け落ちた跡には、ねじれた鉄骨と黒く焼け焦げた地面だけが残る。火の勢いは収まりつつあるものの、自宅を失った住民は、先の見えない生活を避難所で続けている。日常を取り戻すには、住まいの確保と仕事の再建という二つの課題が同時にのしかかる。

行政も、現金支援の受け皿づくりを急いだ。市と県は火災発生から2日後に義援金の募集を開始し、大分市には28日正午までに約1億1500万円が寄せられている。さらに、日本赤十字社の各県支部も義援金口座を開設し、遠方からでも支援できる仕組みを整えた。被災地に直接赴けない人々が、オンライン送金やふるさと納税の特設ページを通じて気持ちを託す構図だ。

一方で、避難所には今も約80世帯110人が身を寄せている。体育館や公民館は雨風をしのげるが、プライバシーの確保や仕事、通学の継続には限界がある。現金や物資の支援が広がっても、「どこに住み、どの地域コミュニティで暮らし直すか」という決断は、最終的には一人ひとりの家族に委ねられる。寄付が実際の住宅再建や転居費用にどう配分されるのか、その仕組みを丁寧に示すことが、現場の安心感につながる。

企業が示す「地元への恩返し」と税制の役割

支援の輪を象徴するのが、非鉄大手JX金属グループによる10億円の寄付だ。同社は大分市に対し、企業版ふるさと納税の枠組みを使って拠出すると発表した。佐賀関製錬所は1916年の操業開始以来、100年以上にわたり地域と共存してきた拠点でもある。企業側は「地域に支えられてきた歴史への恩返し」と位置付け、単発ではなく継続的な支援も検討しているという。

貸し会議室やホテルを全国展開するティーケーピーは、市への3000万円の支援に加え、自社ホテルの255室を一時避難先として無償提供する。金銭だけでなく、宿泊インフラそのものを差し出すことで、高齢者や子ども連れの世帯がより落ち着いた環境で過ごせるようにする狙いだ。企業にとっては稼働率の読みにくい時期に部屋を地域に開放する決断であり、災害時にビジネス資源をどう共有するかという新しいモデルにも映る。

企業版ふるさと納税は、自治体が指定した事業に企業が寄付すると、法人税などが優遇される制度だ。今回のように、大規模災害の復旧・復興プロジェクトを対象にすることで、地方自治体だけでは賄いきれないインフラ整備や生活再建支援に民間資金を呼び込める。一方で、特定の企業に過度に依存すれば、地域の復興計画が企業戦略の影響を受けかねないとの指摘もある。中長期的には、複数の企業や個人、公共予算を組み合わせた「多元的な財源構成」をどう作るかが問われる。

配信者の呼び掛けと、長い再建へのまなざし

今回の火災では、企業だけでなく、インターネット上のコミュニティも動いた。大分県で育った人気VTuberが24日のライブ配信で、視聴者からの投げ銭の全額相当を被災地に寄付すると宣言し、Xでも早期復興を祈る投稿を行った。画面越しにファンが寄せる小さな額の支援が積み重なれば、現地の支援金窓口に届くまとまった資金になる。オンライン文化で育った世代が、自分なりの形で「地元」や被災地とつながろうとしている。

大分市は、ふるさと納税サイト上に火災被災地向けの特設ページを設け、返礼品なしの災害支援寄付を受け付けている。これに加え、他県の赤十字支部も義援金口座を案内し、全国どこからでも少額寄付が可能になった。災害のたびに整備されてきたこうした仕組みは、「クリックひとつ」で支援できる気軽さと同時に、寄付がどの事業に充てられるのかを透明に示す責任も背負う。

地震を伴わない都市火災としては異例の規模となった佐賀関の被害は、地方の小さな港町がどれほど脆弱でありながら、同時に全国からの支援を引き寄せる力を持ちうるかを浮かび上がらせた。現金や物資、宿泊施設の提供、オンライン配信を通じた寄付――支援の形は多様だが、それをどう束ね、住宅や仕事、地域コミュニティの再生という長い時間軸へつなげていくかは、これからの議論に委ねられている。被災地の人々の選択と歩調を合わせながら、外からの善意が息長く寄り添える仕組みづくりが求められている。

避難生活と寄付のあいだにある距離

企業が示す「地元への恩返し」と税制の役割

配信者の呼び掛けと、長い再建へのまなざし

参考・出典