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早稲田大学の研究機関と大手新聞社が行った郵送方式の全国調査で、夏の参院選後の政治意識が問われた。その中で、外国人を「積極的に」労働力として受け入れることへの賛否を尋ねると、反対寄りの回答が59%にのぼったという。前年の調査より反対が大きく増えたにもかかわらず、日本社会は深刻な人手不足に直面し、外国人材の受け入れ拡大へ政策は動き続けている。本記事では、このねじれがなぜ生じ、私たちの暮らしにどのような選択を迫っているのかを考えたい。
「反対」増加の陰にある、暮らしの不安
共同調査では、日本に住む外国人が増えた場合に起こり得る変化も複数回答で尋ねている。最も多かったのは「治安が悪化する」と見る回答で68%に達し、次いで「言語や文化、習慣の違いからトラブルが起きる」が続いた。一方で「人手不足の解消につながる」との肯定的な選択肢も6割程度あり、生活を支える力としての期待と、地域での摩擦や不安が同時に存在している様子がうかがえる。
他の調査を見ると、問い方次第で世論の見え方は変わる。朝日新聞が2024年に行った郵送調査では、人手不足が深刻な分野に限った外国人労働者の受け入れ拡大について、賛成が62%、反対は28%だった。5年前には賛否が拮抗していたのに比べれば、必要な場面での受け入れには理解が広がっているとも読める。つまり、「積極的に」という言葉への違和感と、「やむを得ない受け入れ」を認める感覚が人々の中で同居しているのである。
企業向けの調査でも、その揺れは確認できる。民間シンクタンクが2025年秋に実施したオンライン調査では、社会活動を維持するための外国人受け入れを「やむを得ない」と答えた人が52%、「原則反対」が34%、「積極的に」は一桁台にとどまった。多くの人は外国人材を完全には否定しておらず、ただ生活の安全や地域コミュニティへの影響に強い不安を抱いている。その不安をどう受け止めるかが、「慎重な世論と受け入れ拡大は両立するのか」という問いの出発点になる。
制度は受け入れ拡大へ、人口減少という現実
一方、政策の流れは外国人材の活用を明確に志向している。2024年には、30年以上続いた技能実習制度を廃止し、新たに「育成就労」制度を設ける改正入管法が成立した。新制度は、労働力の確保と人材育成を目的に掲げ、一定期間働いた後には同じ分野内での職場変更を認めるなど、より長く日本で働き続けられる仕組みを整えるものだ。介護や農業、建設など、既に外国人なしでは回らない現場を前提にした制度設計といえる。
背景には、人口構造の急激な変化がある。総人口は2065年に9000万人を下回ると推計され、生産年齢人口の比率も現在の6割前後から5割強へ落ち込む見通しだ。地方ではすでに、バス路線や介護施設、農業生産の維持が難しくなりつつあり、日本人だけで必要な働き手を確保するのは現実的でない。女性や高齢者の就労促進、技術革新による省力化を進めても、それだけでは支えきれない層をどこまで外国人材に委ねるのかが問われている。
しかし、制度づくりの議論は、必ずしも地域社会の感覚と足並みがそろってはいない。国会では育成就労や在留資格の拡大が議論される一方で、自治体の現場では通訳配置や学校・医療機関での受け入れ体制づくりが追いつかないとの声もある。制度の狙いが「人材確保」として語られるほど、住民は自分たちの暮らしとの接点を見いだしにくくなる。国際的な人材獲得競争に遅れまいとする政策と、足元の合意形成とのギャップが、今回のような慎重な世論として表面化している側面もあるだろう。
賛否二分から「どのように受け入れるか」への転換を
ここまで見てきたように、世論は「全面的な歓迎」と「全面的な拒否」のどちらかに割れているわけではない。多くの人は、人手不足や地域サービス維持のために外国人材が必要だと理解しつつ、その増加が治安やマナー、教育環境にどんな影響を及ぼすのかを案じている。であれば、議論の軸を「受け入れるか否か」から、「どの分野で、どの程度、どの条件で受け入れるのか」へ移す必要がある。数の上限、家族帯同の可否、日本語教育や生活オリエンテーションの義務付けといった具体的な設計が、安心感を左右する。
実際、先行して取り組む自治体では、外国人住民向けの多言語相談窓口や、地域行事への参加機会づくりを通じて、トラブルの芽を早めに摘もうとする動きが広がっている。現場の企業も、労働時間管理の徹底や母国語での安全教育などを組み合わせ、過去に問題を抱えた技能実習の反省を生かそうとしている。こうした地道な取り組みが丁寧に共有されれば、「受け入れれば必ず治安が悪化する」というイメージは、少しずつ修正されていくはずだ。ただし、そのコストと負担を誰がどこまで担うのかについては、まだ十分に議論されていない。
今回の共同調査で示された59%の「反対」は、単純な排外感情の表れというより、制度改革のスピードと生活者の安心の間に生じたずれの大きさを示す警鐘でもある。外国人材はすでに多くの現場で不可欠な存在となっている以上、「外国人がいる社会かどうか」ではなく、「どのような前提と支えのもとで共に暮らすのか」を詰めていくことが、これからの政治と私たち一人ひとりに求められている課題だろう。
