本サイトの記事や画像はAIが公的資料や報道を整理し制作したものです。[続きを表示]ただし誤りや不確定な情報が含まれることがありますので、参考の一助としてご覧いただき、実際の判断は公的資料や他の報道を直接ご確認ください。[私たちの取り組み]
市販薬と成分や効果が近い処方薬「OTC類似薬」をめぐり、厚生労働省が新たな負担のあり方を示した。公的医療保険の対象からは外さず、患者の自己負担を上乗せする案で、27日に開かれた社会保障審議会の医療保険部会ではおおむね支持が集まったという。年末までに見直しの方向性を固める方針で、薬局の棚に並ぶ保湿剤や抗アレルギー薬を前に、誰がどこまで負担するのかという線引きが問われている。
OTC類似薬の追加負担、患者と薬局の戸惑い
OTC類似薬とは、薬局で市販されている風邪薬や保湿剤などと成分や効き目が近い一方、医師の処方箋が必要な薬を指す。現在は保険適用により患者の負担は1〜3割に抑えられ、市販薬より安く手に入るケースも多い。そこに新たな自己負担を上乗せする発想は、医療費抑制と患者の負担感のどこで折り合いをつけるのかという、根本的な問いを浮かび上がらせる。
アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎など、慢性的な症状を抱える人の中には、月に何度も保湿剤や抗アレルギー薬の処方を受ける人がいる。1回あたりの上乗せ額が小さくても、回数が重なれば家計への影響は無視できない。薬局の現場では、医師の診察が必要な薬と市販薬、そしてOTC類似薬との違いをどう説明し、患者にどの選択肢が妥当かを一緒に考える役割が一段と重くなる。
過去の議論では、日本医師会など医療関係団体から「自己負担の引き上げは受診控えを招きかねない」との懸念が繰り返し示されてきた。特に低所得層や独り暮らしの高齢者にとっては、ちょっとした支出増が通院をためらうきっかけになりうる。制度設計が進むほど、数字上の財政効果だけでなく、通院や服薬を続ける力をどう支えるかという生活者の視点が欠かせない。
厚労省案と維新の主張、政治の攻防
厚労省が今回示したのは、OTC類似薬を保険の対象に残したうえで、通常の自己負担とは別枠で追加負担を求める案だ。27日の医療保険部会では、多くの委員が医療へのアクセスを急に狭めるべきではないとし、この「保険維持プラス負担増」という方向性に一定の理解を示した。保険給付の縮小を急ぐのではなく、段階的に患者負担を調整する「妥協案」と位置づけられる。
一方、日本維新の会は、医療費削減の切り札の一つとしてOTC類似薬の保険適用からの除外を主張してきた。公的保険でカバーしなくても、市販薬で代替できるものが多いとして、数兆円規模の歳出削減と保険料負担の軽減を訴える。これに対し与党側には、急激な除外は患者の不安や混乱を招きかねないとの懸念が根強く、両者の距離は簡単には埋まっていない。
それでも、医療保険制度の持続可能性を高める必要性は各党で共有されている。今年6月には、自民、公明、日本維新の会の3党が、OTC類似薬の保険給付を見直し、2026年度から具体策を実施する方針で合意した。厚労省の審議会で示された追加負担案も、この政治合意と整合をとりつつ年末の予算編成までに詰められる見通しで、追加負担の水準や対象となる品目の線引きが本格的な交渉の焦点となる。
医療費抑制と安心の両立へ、残る論点
背景には、高齢化で膨らみ続ける医療費という構造的な問題がある。国の医療費は40兆円を超え、診療報酬の抑制だけでは限界が見え始めた。そのなかで、比較的安全性が高く、市販薬でも代替可能とされる薬を保険から外す、あるいは負担を増やすという発想は、約30年前から繰り返し検討されてきた。それでも、実際に保険適用外となったのは一部のビタミン剤や美容目的の保湿剤など、ごく限られた例にとどまる。
今回のOTC類似薬見直しでも、設計次第で結果は大きく変わる。追加負担が高すぎれば、患者は市販薬で済ませようとし、医師の診察や継続的なフォローから離れてしまう恐れがある。逆に、上乗せ負担がごく小さいままなら、財政効果は限定的になりかねない。どこに線を引けば、医療費抑制と必要な受診・服薬の確保を両立できるのかという、難しいパズルが突きつけられている。
今後、年末の方針決定と2026年度からの具体策実施に向け、政党間協議と厚労省の制度設計が並行して進む。重要なのは、どの薬がOTC類似薬として扱われ、なぜその負担を増やすのかという理由を、患者や現場の医療者に丁寧に説明することだろう。医療費抑制の必要性を前提としつつも、負担の線引きを誰がどのように決めるのかを、社会全体で共有していくプロセスが求められている。
