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モニター画面に細い航跡が幾重にも重なる。米領グアムにある太平洋島しょ安全保障センター(PCIS)のオフィスで、ディレクターのリーランド・ベティス氏は「かつては存在そのものが抑止力だったが、今は標的になり得る」と静かに語った。中国の調査船と米軍の演習が同じ海域に集まりつつある現状を、彼は島々の目線から伝えようとしている。
調査船5隻と9回の演習が交差した北西太平洋
PCISが2025年11月20日に公開した新たな「ミクロネシア安全保障モニター」は、2025年10月に中国の調査船5隻が北西太平洋で活動した様子を映し出す。宇宙・ミサイル追跡船「遠望7」を含む3隻がキリバス周辺を航行し、残る2隻はグアム東方でミクロネシア連邦やマーシャル諸島に近い海域を進んだ。同じ期間、米軍は8月から11月の間にグアム近海で9回の多国間演習を実施し、日本、オーストラリア、インド、韓国などが参加した。
これらの中国船は、衛星やミサイルの軌道を追う装置や、海底地形や音の伝わり方を細かく測る装備を備えるとされる。ベティス氏は、米軍と同盟国が繰り返し訓練する海域へ調査船が送り込まれることで、「実質的には海中の戦闘空間を地図のように描き出している」と見る。海のデータは、海洋学の研究に使える一方で、潜水艦の行動やミサイル運用を有利にする軍事情報にもなり得る。モニター事業はカーネギー財団や笹川平和財団の支援で運営され、島しょ国から見たリスクの「見える化」を目指している。
島しょ国が抱える「前線に立たされる」不安
渦中に置かれているのは、大国ではなく小さな島々だ。キリバスは、排他的経済水域(EEZ)と呼ばれる資源管理のための海域だけで約360万平方kmを抱え、中国と緊密な関係を築いてきた。一方で、2024年には中国の大陸間弾道ミサイルが周辺海域に落下したことに懸念を示している。ミクロネシア連邦やマーシャル諸島、パラオなどは米国と安全保障協定を結び、米軍はグアムやマーシャルに基地を構え、自由連合盟約国として上空や海上の利用権も持つ。
ミクロネシア安全保障モニターの地図には、こうした島々の周囲を通る中国船の軌跡に加え、強化された埠頭や延長された滑走路など米軍インフラの広がりも描かれる。PCISは、急速な軍備の進展により、島しょ国が「通り道」ではなく潜在的な攻撃対象として計算に入れられかねないと警告する。中国外務省は調査船派遣の目的についてコメントしておらず、島の人びとは漁や生活を続ける一方で、自分たちの海がどのような意図で測られているのかを知る術が乏しい。
静かな潮の流れの下で、調査船と軍用機の航跡が折り重なり、その線の集まりが太平洋の小さな島々の未来の輪郭を少しずつ描きつつあるように見える。
