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報告書を掲げた担当者の声は低く、会見場に一瞬沈黙が落ちた。国連貿易開発会議（UNCTAD）は2025年11月25日、パレスチナ経済が2年にわたるガザでの戦闘と厳しい経済制限で「観測史上最悪の崩壊」に直面していると公表した。1人当たりGDPが2003年の水準に逆戻りし、このわずか2年で22年分の発展が失われたと指摘している。
「22年分が消えた」数字が示す歴史的な崩壊
UNCTADの報告書は、ガザを中心とする軍事作戦と封鎖がインフラや工場、病院、学校、電力や水道網まで破壊し、生産の土台そのものを崩したと描写する。パレスチナ全体のGDPは2022年比で約3割縮小し、1人当たりGDPは2003年の水準まで落ち込んだ。報告書は、この落ち込みが1960年以降の世界の10大経済危機の1つに相当すると評価している。
なかでも被害が集中したガザでは、2024年のGDPが前年から83％も減少し、2022年からの累計では価値の87％を失ったとされる。経済規模はわずか2年前の13％に縮み、1人当たりGDPは年間161ドルと世界でも最低水準だ。約230万人の住民すべてが貧困ラインを下回り、UNCTADは「近年で最悪の経済危機」と位置づけている。1人当たりGDPとは、住民1人が平均して生み出す富を示す指標である。
ガザと西岸に重なる危機、復興への険しい道筋
視線を西へ移すと、ヨルダン川西岸地区も深刻だ。UNCTADによれば、2024年の西岸のGDPは前年比17％減少し、1人当たり所得も約2割落ち込んだ。長年続く移動制限や検問、入植地の拡大で、農地や市場へのアクセスは狭められてきた。さらに、イスラエル側による税収の送金停止が財政を圧迫し、自治政府は賃金支払いさえままならず、公共サービスの維持に苦しんでいる。
報告書は、ガザの復興には数十年と巨額の資金が必要であり、現在のままでは持続的な回復は望めないと警鐘を鳴らす。破壊された住宅や港湾、発電施設を再建するだけでなく、物流や貿易、投資を縛る制限の緩和が不可欠だと訴える。UNCTADは、安定した停戦と大規模な国際支援、そしてパレスチナ側の財政基盤を回復させる仕組みづくりを同時に進めるよう各国に呼びかけている。
統計表の数字の裏側には、職を失った労働者や閉まったままの商店がいる。静まり返った市場に並ぶ空の店先は、報告書が示した「歴史的崩壊」が、いまも続く日常そのものだと物語っている。
