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与野党が総理大臣指名選挙を2025年10月21日に実施する方向で大筋合意した。公明党の連立離脱で空白が生まれ、石破内閣は総辞職へ。多数派工作の綱引きで国会日程は揺れてきたが、ようやく決着の兆しが見え始めた。会期は同年12月17日までの58日間とする案で詰めの協議が進み、経済と政治資金をめぐる論戦が走り出すと映る。
決まらなかった日程が動き出す
夕刻の永田町、議員会館前に詰めかけた記者のカメラが同じ扉を見つめていた。総理大臣指名は国会召集日に行うのが慣例だが、今回は日程が定まらない異例の展開が続いた。背景には、公明党の連立離脱を受けた議席計算の急変と、水面下での連携模索があったとみられる。与野党は21日の実施で歩み寄り、ようやく本会議の段取りが見えてきた格好だ。
石破内閣は指名選挙に先立って総辞職し、新たな首班の下で組閣が進む段取りになる。政権の座をめぐる多数派の形成は、これまで以上に一票の重みを増している。自民党新総裁の高市氏は就任直後から各党との接点を探り、野党側も候補一本化をにらむなど、議場の座席表以上に「誰がどこに立つか」を読む神経戦が続いてきたといえる。
臨時国会の会期は2025年10月21日から12月17日までの58日間とする案で大筋合意に達したとされる。現時点で確認されている範囲では、正式な手続きは今後の議院運営委員会や本会議の決定で確定する見通しだ。召集や会期配分をめぐっては「多数派が定まらず遅れる」との見立てもあったが、21日の指名実施が固まれば、日程の遅れは最小限にとどまる。
連立離脱が変えた力学
流れを決定づけたのは、公明党が自民党との連立から離脱したことだ。1999年以来の枠組みが崩れたことで、国会の過半形成は一気に難度を増した。自民は第一党の座を保ちながらも、単独では首班指名と政策遂行の双方で不安定さを抱える。与野党の境界が薄れ、個別政策ごとに賛同者を募る「案件連立」の色合いが濃くなっている現実が浮かぶ。
公明側の離脱理由としては、政治資金をめぐる不信や、連立協議の進め方への不満が指摘されてきた。連立解消の打撃は、選挙区調整や国会対策に及ぶ。これまで票の受け皿を分担してきた選挙協力が揺らげば、次の国政選挙での当落計算も塗り替わる。現に、連立解消後の各党は新たな接点探しを急ぎ、維新や国民民主を含む政策協議が活発化していると映る。
一方で、一部報道では「臨時国会の召集はずれ込む」との見立てもあった。だが、21日の首班指名が見込めるとなれば、国会は演説と代表質問、組閣、人事同意、予算審議へと一気に回り始める。与党は流動化する票読みをにらみながら、個々の法案や予算で議席を束ねる戦術に切り替える必要がある。旧来の与野党二項対立の図は、しばらく当てはまらないかもしれない。
物価と「政治とカネ」が交差する
高市総裁は総理に選出されれば、物価高への緊急対策を最優先に据える考えをにじませている。家計の実感に直結する価格高騰への処方箋をどこまで厚く積めるかが、新政権の初動評価を左右する。裏付けとなる2025年度補正予算案の規模感や、減税・給付の線引き、賃上げと投資を促す制度設計まで、短い時間軸での意思決定が問われる構図だ。
同時に、企業・団体献金のあり方や、政治資金規正の深掘りも避けて通れない。公明の離脱理由として指摘されてきた論点でもあり、与野党の距離感が最も露わになる争点である。資金の流れをどこまで透明化し、禁止や上限強化に踏み込むか。経済対策と併走するかたちで制度論の火花が散れば、足元の与野党再編の帰趨にも直結するとみられる。
21日の首班指名が実現すれば、政権は年末までの58日間で成果を示さねばならない。補正予算、物価、政治とカネ。三つの議題は互いに絡み合い、予算の配分と信頼の回復という二つの評価軸をつくる。混じり合う期待と警戒のなかで、国会の時間は刻々と過ぎていく。初動の一手が、来年以降の政治地図を塗り替えることになる。
