ノーベル化学賞 京都大・北川進特別教授、基礎研究に四半世紀必要

ノーベル賞の舞台裏 北川氏が明かす“研究を育てる四半世紀”の現実

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今年のノーベル化学賞を受けた京都大・北川進特別教授(74)が、日本時間7日夕にストックホルムのスウェーデン王立科学アカデミーで公式会見に臨んだ。自身の受賞研究を振り返りながら、基礎研究の成果が社会で本格的に生かされるまでには「四半世紀ほどの時間がいる」と語り、長期にわたる研究資金の必要性を強調した。その言葉は、ノーベル賞という華やかな舞台の裏側で、誰がどのように25年の時間を支えるのかという問いを静かに投げかけている。

研究室から社会までの「25年」 若手が見つめる長い坂道

北川氏は、金属と有機分子を組み合わせた「金属有機構造体(MOF)」の研究で評価された。1990年代に始めた多孔性材料の探究は、当初は応用が見えにくい純粋な基礎研究だったが、いまや二酸化炭素の回収や有害物質の除去、砂漠の空気からの水回収など、脱炭素や環境分野の有力技術として期待されている。会見で語られた「成果が生きるまで約25年」という感覚は、この時間差をそのまま示している。

一方で、多くの研究者が直面する競争的資金は、3〜5年単位で成果を求める仕組みが主流だ。短期間で論文や特許を積み上げなければ次の資金が得にくく、地味で長い道のりになりがちなテーマほど採択されにくいとの指摘もある。ノーベル賞級の成果も、かつては評価が定まらない「見えにくい研究期間」をくぐり抜けてきた。その実感を持つ研究者が、あえて25年というスパンを口にしたことは、若手が安心して長期の挑戦に踏み出せる環境があるかどうかを問い直すメッセージとも受け止められる。

ノーベル賞の光が照らす、日本の研究資金への宿題

北川氏の研究は、京都大の拠点整備や政府の大型プロジェクトなど、比較的長期の支援にも支えられてきた経緯がある。日本でも世界トップレベル研究拠点の整備やムーンショット型研究開発など、10年以上を視野に入れた枠組みは生まれつつあるが、その数は依然として限られている。多くの研究室では、短期間の予算をつなぎ合わせながら人材を雇い、装置を維持する綱渡りが続いているのが実情だ。

今回、世界の注目を浴びる場で示された「長期的な資金的支援が不可欠だ」という北川氏の認識は、国の予算だけでなく、企業や財団などを含めた社会全体の投資のあり方を考え直すきっかけになりうる。すぐに収益や応用が見えない段階でも、一定の失敗を許容しつつ研究者を支え続ける「辛抱強い資本」をどう増やすか。ノーベル賞の栄誉の陰で浮かび上がったこの課題にどう応えるかが、次の25年にどんな発見を芽吹かせるのかを左右しそうだ。

参考・出典

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