ミャンマー国軍が病院を空爆　ラカイン州で市民30人超死亡の深刻被害

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2025.12.11

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ミャンマー西部ラカイン州ムラウーの公立病院が10日夜、国軍機の空爆を受け、多数の市民が犠牲になった。現地の支援団体や反軍勢力の発表、Channel NewsAsiaなどの報道を総合すると、患者や付き添いを含む少なくとも30人以上が死亡し、負傷者は70人前後にのぼるとみられる。治療を求めて集まった人びとを直撃した爆撃は、地域の暮らしと医療への信頼を根底から揺さぶっている。

医療の「最後の砦」が破壊されるということ

空爆を受けたのは、周辺地域で数百床規模の中核病院にあたるムラウー総合病院だ。報道によれば、10日午後9時ごろ、上空から投下された爆弾が院内を直撃し、入院病棟や手術室を含む建物の大部分が焼失したとされる。病院には入院患者だけでなく、付き添いの家族や近隣住民も多くいた時間帯で、遺体の収容や負傷者の搬送が夜通し続いたという。

ラカイン州では、アクセス可能な病院がもともと限られており、今回攻撃を受けた施設は周辺の町村の「最後の砦」に近い存在だった。重症患者や妊産婦は、今後さらに遠方まで搬送しなければならず、道路事情の悪さや治安の不安も重なって命のリスクは一気に高まる。現地で支援活動を続ける関係者は、負傷者の中にも重体が多く、死者数はなお増えるおそれがあるとみている。

ムラウー一帯は、少数民族武装組織アラカン軍が実効支配を強める地域であり、国軍は「反政府勢力の拠点」を標的にしていると主張してきた。一方で、人権団体や国連関係者は、学校や教会、病院といった明らかに民間施設への攻撃が繰り返されていると指摘し、国際人道法違反や戦争犯罪としての調査を求めている。医療機関が狙われる状況では、けがや病気を負っても治療を諦める市民が増え、地域社会の脆弱性は雪だるま式に膨らんでいく。

選挙前に強まる空爆と、止まらない民間人被害

ミャンマー軍は2021年のクーデター以降、各地での劣勢を補うように空爆への依存度を高めてきた。ラジオ・フリー・アジアなどの集計では、2024年だけで空爆や砲撃による民間人の死傷者が数千人規模に達し、過去3年分を上回ったとされる。別の調査機関も、確認された空爆だけで数千人が死亡したと推計しており、空からの攻撃が紛争の主な犠牲要因になっていることが浮かぶ。

今回の病院爆撃が起きたラカイン州では、これまでも市場や村落、学校への空爆が報告されてきた。アムネスティ・インターナショナルは、民家や学校、医療施設への意図的あるいは無差別な攻撃は戦争犯罪として捜査されるべきだと訴え、軍への航空燃料供給の停止を各国に求めている。国連人権高等弁務官も、民間人と民生インフラへの攻撃を直ちにやめるよう軍に繰り返し警告しているが、現場ではむしろ空爆の頻度が増しているとの報告が相次ぐ。

軍は今月28日に予定する総選挙を「和平への出口」と位置づけるが、その前後に茶店や学校、そして今回の病院までが空爆の対象となっている。選挙の正統性をめぐっては、オーストラリアなど各国政府が懸念を表明し、暴力の即時停止を求めている。市民が身を寄せるはずの病院が爆撃される状況では、どのような政治プロセスも暮らしの安全を取り戻す道筋にはなり得ない、という厳しい現実だけが突きつけられている。

医療の「最後の砦」が破壊されるということ

選挙前に強まる空爆と、止まらない民間人被害

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