本サイトの記事や画像はAIが公的資料や報道を整理し制作したものです。ただし誤りや不確定な情報が含まれることがありますので、参考の一助としてご覧いただき、実際の判断は公的資料や他の報道を直接ご確認ください。[私たちの取り組み]
刻印を打ち直した延べ棒が、都心の店先へ次々と運び込まれた。警視庁は2025年11月14日、中国籍の会社役員・楊暁東容疑者(39)=東京都渋谷区=ら8人を、詐欺と有印私文書偽造・同行使(他人名義の文書を作り使う罪)の疑いで逮捕と発表した。3〜7月に約95億円相当の金を不正売却したとみている。千代田区の店舗で偽刻印の金塊37kgを売り、約6億円を得たとされる。
偽刻印の金塊、即日売却の網をすり抜けた
特別捜査課によると、容疑者らは実在の事業者名の刻印を延べ棒に入れ、正規品とする書類を示して売買契約を結んだ。金の買い取りは即日現金化が多く、製造者刻印と証明書がそろえば手続きは進む。この慣行の隙を突き、短時間で現金を得る流れをつくったとみられる。店舗側の確認をすり抜けた経緯が焦点になる。
警視庁は、金の一部は特殊詐欺で詐取された品や密輸品だった可能性を調べている。だまし取った代金は暗号資産(電子的にやり取りされる価値)へ交換し、資金の足跡を薄めた疑いもある。密輸や換金の役割分担、刻印器具や書類の入手経路、保管・運搬の実態まで、実行役の背後にいる指示系統の解明が進む。
高騰する金と、広がる「金地金詐欺」
金地金(投資用の金塊)は相場高騰で需要が強く、持ち運びやすく匿名性も高い。昨年は10都府県で計9億円超の被害が確認され、警察は注意喚起を強めている。価格の上昇と即日換金のしやすさが、犯罪の誘因になっているとの見方がある。相場と流通のスピードが、犯行の構図を後押しした可能性は否定できない。
今回の事件は、個人を狙う詐欺型とは違い、業者への持ち込みで利益を得た点が特徴だ。偽刻印と書類で“正規の流通”に紛れ込み、短期間に大量の現金化を図った可能性がある。個人と業者、双方のチェック体制の間の“境目”に生じた盲点が、被害の拡大を許したと受け止められる。制度と実務の継ぎ目に潜る手口だ。
捜査の焦点と、業界が持つ手立て
捜査は供給源と資金の行方に及ぶ。金の入手経路、偽刻印の作製や打刻、鑑定書類の作成・改ざんの態様、運搬と保管の拠点など、工程ごとの役割分担を洗い出す段階だ。換金後の資金は国内外の口座や暗号資産に流れた可能性があり、記録の追跡と押収が鍵になる。背後の資金回収役や道具の供給網の特定も急がれる。
業界側の対策としては、刻印や番号の照合に加え、履歴の追跡性を高めることがある。入荷から支払いまで一定の保留期間を設ける、複数の鑑定を義務化する、本人確認や取引記録を徹底する、といった実務は難しくない。即日現金化の利便性と真正性の担保をどう両立させるかが問われている。流通の目利きが、静かに重みを増している。