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レジ前でスマートフォンを手に取る人たちの負担が、数年後には少し重くなるかもしれない。ロシア政府が、輸入のスマホやノートパソコンなど消費者向け電子機器に新税をかけ、その税収約27億ドルを今後3年間で国内の電子産業、とりわけ防衛関連の企業支援に振り向ける構想を示した。背景には、西側の制裁で半導体や高性能部品へのルートが細り、自前で必要な機器を確保しなければならなくなったという事情がある。
ロシア政府、新税で電子産業と防衛力をテコ入れ
計画では、新たな課税は2026年9月に始まり、まずは輸入されるスマートフォンとノートパソコンが対象になる。その後、これらの機器に使われる輸入部品にも広げる見通しだ。政府は、新税による収入を国内の電子機器メーカーを支える特別基金に入れ、軍需向けの部品やシステムの国産化を後押しするとしている。アレクセイ・サザノフ財務次官は議会審議で、電子産業は防衛力を支える戦略部門であり、輸入依存を減らすことが極めて重要だと強調した。
こうした動きの根底には、侵攻後に強まった制裁で西側からの半導体や通信機器が入りにくくなったという現実がある。最前線で使われるドローンや精密誘導兵器、高度な情報分析を支える人工知能の開発には、大量の演算能力と最新のチップが欠かせないが、国内の生産体制は需要に追いついていないとされる。政府は税収をテコに供給網を内側に組み替え、軍事とハイテクの両面で外部依存を減らしたい考えだ。
財政再建と家計負担のはざまで揺れる電子機器
新税は単独の措置ではなく、ロシアが進める財政引き締めの一部でもある。政府は2026年に、付加価値税(VAT、付加された価値にかかる間接税)の税率引き上げや、中小企業への新たな課税も予定しており、防衛費の膨張とエネルギー収入の伸び悩みで生じた財政赤字の穴埋めを図る。すでに中小企業からは負担増への懸念が示され、政府は一部で導入ペースを緩める修正も余儀なくされている。
一方で、スマホやノートパソコンなど日常的に使う機器が狙い撃ちされることで、家計への影響は避けられないとの見方がある。価格上昇を嫌った消費者が並行輸入や非公式ルートに流れれば、公式な税収は思うように増えない可能性もある。ロシアではこれまでも、国産IT機器を優先する調達ルールや外国製機器へのリサイクル料導入など、輸入抑制と産業支援を組み合わせた政策が続いてきた。新税はその延長線上にあり、国産化の加速と市民の負担増という、二つの結果を同時に生むかもしれない。
電子機器売り場の静かな棚の上で、この小さな税が社会全体の力の配分をどう変えるのかが、少しずつ試されていく。