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平将明前デジタル相が2025年11月7日の衆院予算委で、7月の参院選を巡り「ロシアによる選挙介入があり、特定政党に言及するSNS投稿が増幅した」と問題提起した。これに参政党の神谷宗幣代表や国民民主党の玉木雄一郎代表がXで反応し、規制と対策をめぐる論点が一気に表面化した。委員会のやり取りが、その日のうちにネットの議論へと広がった構図だ。
「介入」と「規制」の境界
平氏の発言は、海外発の影響力工作（世論に影響を与える活動）をどう把握し、どこまでを「介入」とみなすかという根本の論点を前面に出した。SNS上の拡散はボットや広告、一般の投稿が混ざる。根拠の示し方を誤れば、過度なレッテル貼りにもつながるため、定量評価と透明な検証手順の整備が欠かせないという見方が広がった。
神谷氏は産経ニュースの報道を引用する形で、規制が恣意的に運用される懸念を示し、「自党のナラティブを有利にするための口実にならないか」と警戒心をあらわにした。同党の梅村みずほ参院議員も、証拠の示し方が弱いまま議論が独り歩きしていると指摘した。論点は、実在する脅威への対応と、表現の自由の保全をどう両立させるかに集中した。
影響力工作の典型は、選挙期の懸案や感情的争点に便乗して、相手陣営への不信を増幅させる手口だ。国内アカウントの投稿に海外発の拡散基盤が重なると、因果の特定は難度が上がる。だからこそ、政府も与野党も、拡散経路のログ保存や広告表示の厳格化など、検証可能性を高める措置を先に積み上げる必要があるとの声が委員会外でも強まった。
玉木氏が見据える法整備
玉木氏は、予算委のやり取りを「興味深い」と評し、日本の選挙が海外の影響力工作に無防備だったと受け止めを示した。そのうえで、スパイ防止を含む枠組みや、サイバー分野の実効的な対処権限の整備に言及し、早期の立法作業を促した。違法な介入は厳しく封じ、適法な政治的言論は担保するという二層の設計が要るという立場だ。
同氏はこれまでも、経済や安全保障で実務的な制度設計を重視してきた。直近の党発信でも、国会論戦を通じた制度改正の必要性を繰り返し示しており、影響力工作対策もその延長線上に置く構図である。選挙とネットの接点が太くなるほど、選挙制度や資金、広告の透明性に関するルールと、プラットフォーム側の協力義務が互いに補完し合うよう設計される必要がある。
一方で、過剰規制は避けたいとの懸念も根強い。恣意的な適用を防ぐためには、政府の判断基準をあらかじめ明文化し、第三者機関が検証可能な形で運用することが肝心だ。違法な情報操作や資金の流入は厳格に遮断しつつ、一般の政治的言論や告発、風刺が萎縮しないよう、境界線の可視化と異議申立ての仕組みを整えることが求められている。
7月の経験とこれから
7月の参院選では、X上で誤情報が短時間に広がる事例も生じた。神谷氏が第三者の誤った投稿をリポストし、のちに訂正と謝罪を表明した件は、意図せぬ拡散でも現実の影響が残ることを可視化した。善意や過失に起因する誤りと、組織的な工作をどう識別し、どのように素早く是正するかは、制度と運用の両面で改善の余地がある。
他方で、参政党が海外勢力から支援を受けているとの見方が広がった局面で、党代表が否定の立場を明確にする場面もあった。疑念が一度走れば、否定を公表しても火の粉は残る。だからこそ、各党や候補者側が発信の経緯や資金の流れ、広告の出稿基準をいつでも説明できる態勢を整えることが、予防と防衛の両面で効くと受け止められている。
制度面では、選挙広告の表示義務や出稿主体の確認強化、ボットや生成AIによる大量拡散へのラベル付けとログ保存、第三者による監査の常設化が現実的な一歩だろう。規制と自由の綱引きに終始せず、検証可能性と再現性を高める設計に重心を置くことで、疑念と萎縮の双方を抑えながら、必要な抑止力をじわりと効かせられる。
委員会で交わされた言葉の余韻は、静かな画面の向こうで今も波紋を広げている。
