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陸上自衛隊オスプレイの拠点となる佐賀空港近くの駐屯地計画をめぐり、県有地の無償提供は違法だと訴えた住民訴訟で、福岡高裁は12月1日、佐賀県の対応を違法とはいえないと判断し、原告35人の控訴を退けた。公共の土地を国の防衛施設にどう使うのかという問いは、空港ターミナルの先で今もくすぶり続けている。
県有地は誰のためのものか 住民が訴えた理由
住民側は、佐賀空港南西の県有地約12万平方メートルが、防衛省の排水施設整備などに無償で使われていることを問題にしてきた。佐賀テレビの報道によると、県が土地や土砂を有償で扱えば数億円規模の収入になったはずだと主張し、「県民の財産が失われる」と訴えている。福岡高裁は一方で、県の判断は自治体の裁量の範囲にあるとして、違法性を認めなかった。
判決の日、福岡市の高裁前では原告側の弁護団が「不当判決」と記した横断幕を掲げたと報じられている。住民35人の中には、空港の利便性を評価しつつも、軍事色が強まれば騒音や事故リスクが増すのではないかと心配する人もいる。彼らは最高裁への上告を目指す方針を示し、県有地の扱いを改めて問おうとしている。
一方で、空港周辺では、自衛隊駐屯地の整備に伴う工事がすでに進んでおり、通勤路のトラック増加や景観の変化を実感する人も多い。漁業者や農家の中には、補償や地域振興策を条件に計画を受け入れた人もいれば、将来の漁場や農地への影響を懸念し、異議を申し立て続ける人もいる。今回の住民訴訟は、そうした複雑な思いの一部が法廷に持ち込まれたかたちだ。
自治体の裁量と「無償提供」 裁判所が見た境界線
福岡高裁は、県有地の無償使用について、駐屯地整備に伴う排水対策は公共目的に沿うとして、県の判断を違法とはいえないと結論づけたと報じられている。自治体が公有地をどの条件で国に提供するかについては、地方自治法の枠内で首長や議会に広い裁量があるとされる。佐賀地裁も今年3月、同じ住民訴訟で県の行為は適法だと判断しており、高裁はその流れを追認した格好だ。
同じオスプレイ配備計画をめぐっては、建設予定地の所有権を主張する地元漁業者らが工事差し止めを求めた仮処分でも、佐賀地裁と福岡高裁がいずれも住民側の主張を退けている。各局の報道によれば、裁判所はいずれも土地の権利関係や契約手続きの適法性を精査し、騒音や事故リスクといった将来の不安そのものは判断の対象に含めなかった。法廷で争われているのは、基地の是非そのものより、公有地をどう扱ったかという手続き部分なのが実情だ。
住民訴訟は、本来は自治体が公金や財産を違法に扱ったかどうかを住民がチェックするための制度だ。今回のように、防衛施設整備に伴う土地提供が争点となる場合、裁判所は「どれだけ財政的損失があったか」「どこまでが首長の政治的判断か」を線引きすることになる。その線が行政寄りに引かれるほど、住民側が違法性を立証するハードルは高くなる。
石垣島の裁判と重なる構図 問われ続ける住民の関与
自衛隊配備をめぐる司法判断は、佐賀だけの問題ではない。沖縄県石垣市でも、陸自配備計画の賛否を問う住民投票を求めた住民らが、市を相手に訴訟を起こしたが、昨年3月に福岡高裁那覇支部が控訴を棄却し、住民側の請求を退けている。住民投票の是非という別の形をとりながらも、「基地の在り方をどこまで住民が決められるのか」というテーマは共通している。
佐賀では、245人の市民らが駐屯地建設の中止を求める別の訴訟も起こしており、今後も裁判が続く見通しだと朝日新聞などが伝えている。各地で争点は、公有地の提供、所有権、住民投票の手続きなど法技術的な側面に分解されがちだが、その背後には抑止力強化など国の防衛政策の判断がある。地元に暮らす人びとの不安や期待が、裁判記録の行間からこぼれ落ちていないかを確かめる役割が、報道や議会に求められている。
今回の高裁判決で、佐賀のオスプレイ駐屯地計画は一段と既成事実化したように見えるが、県有地を誰のために、どの条件で差し出すのかという問いは終わっていない。費用とリスクを誰がどこまで負担するのか、司法の判断だけでは語りきれない部分を、地域社会が時間をかけて見極めていくことになるだろう。
