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米OpenAIのサム・アルトマンCEOは2025年9月24日（JST）、個人ブログ「Abundant Intelligence」で「毎週1ギガワットのAIインフラを生産する工場」をつくる構想を示した。NVIDIAの巨額投資と重なり、私たちの暮らしや電力の在り方はどう変わるのか、考えたことはあるだろうか？
アルトマンが描いた“毎週1GWの工場”は何をめざすのか
サム・アルトマンの短いエッセイは、舞台を日常の風景に引き戻すように始まる。彼はAIを単なるツールではなく「経済の根本的な原動力」へと位置づけ、利用が広がるにつれてAIへのアクセス自体が基本的人権に近いものになる可能性を示唆した。言葉は大胆だが、要点は単純明快だ：需要が爆発的に増えるなら、供給を圧倒的に増やすしかない、という論理である。
その具体案が「工場」だ。アルトマンは「毎週1ギガワットの新たなAIインフラを生産できる工場」をつくるビジョンを掲げ、長期的には10ギガワット級の演算能力があれば、がん治療の発見や個別のカスタマイズ教育など、これまで資源不足で手が回らなかった大きな課題にAIが取り組めると書いている。構想はスケール感と同時に、選択を迫られる現実を強調する。
NVIDIAの出資と「10ギガワット」構想の重み
アルトマンの宣言は、NVIDIA側の発表とほぼ時を同じくして世に出た。NVIDIAはOpenAIとの戦略的提携で、少なくとも10ギガワット分のNVIDIA製システムを導入する計画を打ち出し、導入に合わせて最大1000億ドルを段階的に投資する意向を示した。これは単なる取引を超え、ハードウェアと資本を一体で動かす大規模なインフラ戦略だ。
だが、報道が伝える数字は重い。関係筋や経営側の説明によれば、NVIDIAの初回投資は1ギガワット分の立ち上げに充てられる約10億ドル程度とされ、同時にNVIDIAの幹部は「1ギガワットの構築には数十億ドル単位かかる」といった試算も披露している。計算上は、単位あたりのコストが極めて大きく、資金と供給の両輪を同時に確保しなければ短期的な実現は難しい。
技術面では、NVIDIAの次世代プラットフォーム「Vera Rubin」を用いた最初のシステムが2026年後半に稼働する見通しとされる。実際にどの規模で、どの国や地域に敷設するかは、電力や土地、現地の許認可といった現実的な条件に左右されるため、今後の発表で細部が詰められていくだろう。
電力・資金・競争――現実が突きつける問い
構想にロマンがある一方で、現実は質問を次々と投げかける。毎週1ギガワットというスピードは、電力網や建設資源に前例のない負荷をかける。実際、OpenAIが進める「Stargate」などの計画では、既に複数拠点で合計数ギガワット級の候補地が動いており、現場では電源の確保や地元調整が最優先課題になっている。では、その電力と膨大な費用を誰がどう負担するのか、地域社会は受け入れ態勢を整えられるのか。という問いが突きつけられている。
加えて競争とガバナンスの問題も見逃せない。NVIDIAが大きく関与することで、チップ供給の配分や取引関係に影響が出る可能性が指摘されており、これが業界の勢力図を変える懸念もある。アルトマン自身も、演算資源が限られる状況では何を優先するかを選ばねばならない、と率直に書いており、この選択が倫理や政策の論点を呼ぶ。
とはいえ、こうした「選択」の背後には明確な期待もある。誰もが使えるAIを目指すなら、ただ巨大な施設を積み上げるだけでなく、電力の効率化や再生可能エネルギーの組み合わせ、地域経済との協調といった設計が求められる。アルトマンは今後数カ月でパートナーや資金調達の詳細を順次説明すると予告しており、実行計画の中身が見えてくるまでは、楽観と懸念が交錯する時間が続くだろう。
