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東京・永田町にざわめきが走った。2025年10月21日、高市早苗氏が衆参両院の首相指名で第104代内閣総理大臣に選ばれ、国内外が「日本初の女性首相」を一斉に報じた。ロシアの国営通信は「方針に大きな変化は見込みにくい」との見立ても伝え、歴史的瞬間に現実の力学が差し込む。新体制の第一歩は、内外の視線の交差から始まったといえる。
歴史的な指名の瞬間と国内の空気
午後の本会議場で名前が読み上げられると、短い静寂ののち拍手が広がった。衆参両院での首相指名投票を経て、高市氏は伊藤博文から数えて第104代の総理に指名された。手続きは粛々と進んだが、初の女性首相という節目がもたらす空気の揺らぎは、国会内外に確かな余韻を残したと映る。
同日、閣議では前内閣の総辞職が決定され、政権のバトンは定められた段取りで渡された。形式に忠実な一連の動きは、日本政治の連続性を映す鏡でもある。人物が代わっても、国家の仕組みは慣性を保ち、次の政策判断の舞台を整える。期待と警戒が交錯するなか、政権の輪郭はこれから描かれていくとみられる。
就任直後から国会運営、与野党協議、組閣の顔ぶれが注目を集めるだろう。経済対策や防衛、社会保障の優先順位がどう置き換わるのか、初動のメッセージは国民の肌感覚に直結する。初の女性宰相という看板以上に、暮らしの実感へ何をもたらすのか。その答えを測る物差しが、早くも有権者の手に握られている。
ロシアの視線が映す外交の現実
海外メディアの速報の中でも、ロシア国営通信が「歴史的」と同時に「大きな路線変更は想定しにくい」との見立てを添えた点は示唆的である。エネルギー、安保、経済制裁という複層の課題が絡み、首相交代だけで解ける結び目ではないという冷めた現実認識がにじむ。そこに、外交の持久戦が浮かぶ。
ロシアによるウクライナ侵攻以降、日露関係は制裁と対抗措置の応酬で冷え込んだ。日本側は国際協調の枠組みで制裁を重ね、ロシア側は日本の関係者に入国制限を科すなど緊張は長期化してきた。戦闘が続く限り、頂点同士の対話は容易に再開しないとの見方が根強い。政権交代だけで氷解する情勢ではないと映る。
一方で、高市政権の足元には経済・安全保障の現実がある。原材料やエネルギー価格の安定、海洋安全保障、サプライチェーンの再設計は、いずれも対露政策の変数とつながる。制裁の堅持と国益の調整、その折り合いをどう付けるか。ロシアの視線は厳しく、国内世論の期待は高い。細い綱を渡るような舵取りが続く。
靖国参拝という論点が帯びる温度差
高市氏はこれまでも靖国神社を参拝してきた政治家である。この行為は国内でも評価が割れるが、周辺国では「歴史認識」の象徴として受け止められやすい。ロシアの報道が参拝を論点として取り上げた背景には、地域の安全保障と歴史をめぐる物語が重なっていることがうかがえる。
就任後の節目ごとの対応は、近隣外交の体温を左右する。参拝の可否を巡る判断は内政の自由である一方、国際環境に与える波紋も小さくない。表現やタイミング、発言の文脈まで含め、総合的な判断が問われる局面が続くだろう。国内の支持と国際社会の目線、その両立は容易ではない。
ロシアの通信社が「変化は小さい」とみる一方で、国内では女性宰相の誕生が政治文化をどう更新するかへの期待もある。記号化された争点に回収されない具体策をどう積み上げるか。安全保障と歴史認識、経済と生活。絡み合う糸を一本ずつほどく作業が、きょう始まったばかりである。
