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公正取引委員会は12日、大阪市に本社を置く総合物流大手センコーが、委託先の運送事業者に荷物の積み下ろしや付随作業を無償で行わせていたとして、下請代金支払遅延等防止法違反を認定し、勧告を行った。トラック運転手の残業規制が強まり、人手不足が懸念されるなか、長年の慣行だった「タダの荷役・荷待ち」に司法当局が初めて明確なメスを入れた格好だ。
無償作業が積み重ねた長時間労働
公取委によると、センコーは2022年末ごろから、自社が管理する物流施設で、資本金3億円以下の中小の運送会社に対し、トラックから商品を積み替える荷役作業や、受け渡しまでの待機を追加の対価なしで行わせていた。本来は荷主側が担うべき作業や時間の負担が、委託先に押し付けられていたと認定された。
荷物を届ける運転手にとって、倉庫到着後の荷下ろしや伝票処理、順番を待つ時間は、走行とは別の大きな拘束要素だ。現場では「待っている間も仕事」だが、運賃に反映されにくく、残業代も付きにくいと指摘されてきた。こうした無償の荷役・荷待ちが広がれば、労働時間だけが膨らみ、賃金とのバランスが一段と崩れる構図になる。
今回の勧告では、センコーに対し、無償で行わせた荷役や長時間待機にかかった費用を、該当する下請け事業者へ支払うことが求められたほか、取締役会決議や社内研修などを通じて再発防止体制を整えるよう命じている。支払われる代金が最終的にドライバーの処遇改善や休息確保につながるかどうかは、各社の配分や取引見直しの進み方にかかっている。
2024年問題と荷主側への監視強化
センコーに適用された下請法4条2項3号は、元請けが下請けに対し不当に経済上の利益提供を求めることを禁じる規定だ。無償の荷役や荷待ちを巡って、この条項に基づき運送業界の事業者が勧告を受けるのは初めてとされる。同じ条項を使った勧告は、近年、自動車部品メーカーなどが金型を無料で保管させていた事案でも相次いでおり、発注側のコストを下請けに押し込む行為全般への包囲網が狭まっている。
背景には、いわゆる「2024年問題」がある。トラック運転手には2024年4月から年間960時間の時間外労働の上限が課され、違反には罰則もあるとされた。もともと労働時間が全産業平均より長く、賃金水準は低い業種とされる中で、国は荷待ちや積み下ろしなどの無駄な拘束時間を減らさなければ輸送力が14%程度不足するとの試算も示してきた。
今回の事案は、ドライバー不足や物流停滞を防ぐには、運送会社だけでなく荷主・元請け側の慣行も変えざるを得ないことを浮かび上がらせた。荷役や待機にきちんと価格を付けるのか、それとも作業の分担やオペレーションを見直すのか。コスト負担をどこまで最終消費者に転嫁するかも含め、物流の持続性を保つための議論が、センコー1社を超えた業界全体の宿題になっている。
