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机の上に積まれた資料をめくる音が、静かな会議室に続いた。高額療養費制度の在り方を話し合う厚生労働省の専門委員会が21日に開かれ、70歳以上の外来診療費を抑えてきた「外来特例」をどうするかが最大の論点となった。月ごとの上限額に達すれば自己負担がほとんど増えない仕組みは「通院し放題」だとの批判も受ける一方、多くの高齢者を支えてきた安全網でもある。政府は、世代間の負担の公平さと暮らしの安心のはざまで、新たな制度像を探っている。
高齢者の外来費を抑える仕組み、その成り立ち
高額療養費制度は、医療費が高くなりすぎたときに、あらかじめ決められた自己負担の上限を超えた分を公的保険が負担する仕組みだ。その中で70歳以上だけに設けられているのが、1人ごとの外来診療に月1万8000円、住民税非課税世帯なら月8000円までとする「外来特例」である。対象は年収約383万円未満の人で、69歳以下よりも低い水準に抑えられている。上限に達した後は同じ月なら何度受診しても自己負担がほとんど増えないため、長く通院を続ける人には心強い一方、現役世代とのバランスを欠くとの指摘も根強い。
この特例は2002年に導入された。高齢者は若い世代と比べて通院回数が多いことから、1割負担の徹底とあわせて外来の負担が急に重くならないよう配慮したのが始まりだ。その後も高齢者の高額療養費は段階的に見直され、2017~2018年には自己負担限度額の引き上げや、70歳以上の外来負担に年間14万4000円の上限を設ける仕組みが導入された。一方で、現役並みの所得がある高齢者向けの外来特例は廃止されるなど、負担能力に応じた線引きも進んできた。今回の議論は、こうした過去の調整の延長線上で、改めて特例の在り方を問い直すものでもある。
見直し議論の焦点と、暮らしへの影響
厚労省は昨年12月、医療費の伸びに対応するため、高額療養費制度の見直し案を公表し、外来特例では年収約80万円以上の高齢者の上限額を月2000~1万円引き上げる案を示した。ところが一部の所得層では自己負担が急に重くなるとの懸念が強まり、患者団体などが相次いで反対を表明。今年3月には当時の石破首相が引き上げをいったん見送り、社会保障審議会の医療保険部会の下に専門委員会を設けて議論をやり直す流れとなった。医療費抑制と患者負担の両立という、長年の課題が改めて前面に出た形である。
その延長線上にあるのが、今回の21日の議論だ。委員からは世代間の給付と負担の均衡を踏まえ外来特例を見直すべきだとの意見が多く、廃止すれば特例を使う約600万人分の給付が3400億円減り、保険料を抑えられるとの試算も示された。一方で、複数の慢性疾患を抱える人には欠かせない安全網だとする声も強く、当面は上限額を引き上げる案を軸に検討が続く。政府は12月までに制度全体の方向性を示す予定で、その結論が高齢者の日々の通院の重さを静かに変えていく。診察券を握りしめて病院へ向かう一人ひとりにとって、数字の裏側にある意味は小さくない。
