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受けた通報を頼りに農道を見回っていた猟友会員の男性が、突然の一撃に身をすくめた。2025年11月12日午前、新発田市二本木の見回り中にクマに襲われ、顔と右脚にけが。意識はある。現場では体長約1.5mの雌グマを所持銃で駆除した。押廻で痕跡が見つかったことを受け、市の要請での出動だった。住民を守る最前線の判断が、重みを増している。
見回りから一転、襲撃まで
通報は同日朝、「クマのフンや柿の木のひっかき跡がある」というものだった。市と警察、猟友会が周辺を捜索し、午前9時すぎに押廻でクマを目撃するも見失う。午前9時半ごろ、複数の会員と二本木を警戒中だった80代の男性が、農道で突然襲われた。被害はこの男性1人に限られた。
男性は右顔面の口角付近と脚に傷を負い、「顔をかまれた」と話したという。救急搬送され、意識ははっきりしている。襲ったのは体長約1.5mの雌グマで、男性は直後に所持していた猟銃で駆除した。現場は耕作地に近い農道で、人の往来も想定される場所だ。
隊列を組んだ見回りの最中でも、遭遇は一瞬の出来事だった。危険の及ぶ範囲を最小化する判断が求められるなか、現場での駆除は二次被害の回避を優先した対応とみられる。周辺では当面、警戒の継続と痕跡の確認が続く。
痕跡が示した前触れ
押廻では直前に糞や樹木へのひっかきが確認され、周辺での行動が示唆されていた。数日前には同地区でクマの移動が目撃された情報もあり、地域の不安は高まっていた。市の防災情報では、柿など誘引物の放置を避けるよう呼びかけが続く。
通報から出動までは、市の要請を受けた猟友会が警察と連携して現場を走るのが基本だ。今回は目撃地点からほど近い農地や集落の境界を重点に見回り、見失った後も範囲を絞って警戒を続けていた。痕跡の新旧や足跡の向きは、捜索の動線を定める手がかりになる。
秋口からは果樹の残り実や収穫後の畑が餌場となりやすく、人里での接触リスクが上がるとされる。生活圏に近づいた個体の動きを早期に把握し、集落側でも餌となるものを片づける。こうした地道な手当てが、遭遇の確率を下げる一歩になる。
地域を守る現場判断
高齢化が進む猟友会は、地域の安全を支える最前線でもある。今回のように依頼を受けて短時間で駆けつけ、足で情報を集め、危険が迫れば身を挺して対応する。標的が人の生活圏にいる場合、引き離すか、その場で止めるかの判断は秒単位で迫られる。
住民にできる備えは多くないが、基本の積み重ねが効く。早朝や夕方の出歩きを控え、山際では鈴やラジオなどの音を携行する。柿や栗などの実、生ごみや収穫残さを放置しない。痕跡や目撃時は市や警察に速やかに通報する。地域の目と手が、現場の負担を軽くする。
今回の負傷者は意識があり、救命活動は落ち着いて進められた。現場では周囲の安全確保と個体の処理が同時に担われ、行政と警察、猟友会の連携が機能した。記録と検証が進めば、次の出動に生かされる手順がまた一つ増えるはずだ。
農道に残った靴跡と土の乱れが、短い遭遇の重さを静かに語っている。
