本サイトの記事や画像はAIが公的資料や報道を整理し制作したものです。ただし誤りや不確定な情報が含まれることがありますので、参考の一助としてご覧いただき、実際の判断は公的資料や他の報道を直接ご確認ください。[私たちの取り組み]
点呼が終わった平塚営業所で、屋根に薄い黒のパネルを載せた路線バスが静かに発車した。豊田通商と神奈川中央交通、PXPが始めた燃費改善の実証である。車内の空調などに必要な電力を太陽光で補い、エンジンの負荷を軽くする狙いだ。2025年11月1日から2026年3月26日まで、5両で導入可能性まで確かめる。
走り出した実証の現場
運転士がハンドルを切るたび、屋根の新しいパネルが街の光を受ける。搭載したのはPXPが開発した次世代型のカルコパイライト太陽電池だ。平塚営業所の管内を走る既存の路線バスに載せ、普段の運行の中で発電と電力供給の具合を見ていく。準備は11月初旬に整い、走行が始まった。
対象は5両。期間は約5か月として、平日も休日もデータを積み重ねる。太陽電池で得た電力を空調や補機に回し、その分だけエンジンの負担を減らす。結果は燃料の使い方や部品の負荷、停車時間の過ごし方にも表れ、車内の快適性との両立を探る設計である。
実証には神奈川県の次世代型太陽電池の普及促進を目的とした補助金が使われる。地域の移動を担う路線で試し、効果や安全性、施工の手間まで含めて現場目線で確かめる枠組みだ。数字だけでなく、整備現場の作業負荷や雨天時の扱いといった細部も検討の対象になる。
軽くて曲がる電池が変える運行
カルコパイライト太陽電池は、軽く、薄く、曲げやすい性質を持つ。振動や衝撃に強く、耐久性にも優れるため、常に揺れにさらされる車両の屋根に向く。固定具の負担を抑えられる分、搭載の自由度が高く、屋根の形状に合わせて設置しやすい。長期の性能維持も期待されている。
路線バスは低速走行や停車が多く、季節によって空調の電力需要が膨らむ。太陽電池で補機電源をまかなえば、発電のためにエンジンへかかる負担を下げられる可能性がある。発進と停止を繰り返す都市部の運行では、その小さな差の積み重ねが効率に直結しやすい。
役割分担も整えている。神奈川中央交通は車両提供と運行データの収集、豊田通商は実証の設計と評価、PXPは技術支援を担う。運行記録と電力の流れを突き合わせ、燃費の変化や季節要因、日射条件の影響を洗い出す。信号待ちの列に紛れ、実証車はいつもと変わらぬ速度で交差点を抜けていく。屋根の薄い板が淡く輝き、少しずつ電気をつくる。積もるデータの先に、静かな効率の向上が見えてくるかもしれない。
