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フランスの首都パリで、南アフリカの駐仏大使ヌコシナティ・エマニュエル・ムテトワ氏（58）が高層ホテルの中庭で遺体で見つかった。パリ検察は2025年9月30日、前夜に妻へ「自ら命を絶つ意向」を示すメッセージがあったと明らかにした。外交団に衝撃が走るなか、捜査は続いている。
パリの高層ホテルで何が起きたのか
2025年9月30日（日本時間）、西パリの高層ホテルの内庭で男性の遺体が見つかった。発見したのは巡回中の警備員だと検察が説明した。遺体は南アフリカのムテトワ大使と確認され、現場には規制線が張られ、静けさの中に緊張が漂った。
検察の発表によれば、ムテトワ氏は同ホテルの22階に部屋を取り、窓の安全装置が外部からこじ開けられていた。現場にはハサミが残され、器具の破損状況は明確だった。ホテルは通常、窓が大きく開かない設計だが、当該室では異常が確認された。
争った形跡は確認されず、医薬品や違法薬物の反応も検出されなかったとされる。検察は遺体発見時の状況や室内の痕跡を突き合わせ、事故と他殺の線を慎重に排除する姿勢を示した。初動の聞き取りは従業員や利用客にも広がっている。
検察が明らかにした経緯と捜査の焦点
妻は2025年9月29日までに夫の姿を確認し、その後に行方不明届を出したと検察は説明した。大使は当夜、カクテルパーティーに出席する予定だったという。予定を外れた移動と沈黙が、周囲に不安を呼び込んだ。
その後、2025年9月30日未明、ムテトワ氏から妻にメッセージが届いた。内容には謝罪が記され、自ら命を絶つ意向が示されていたとされる。捜査当局は通信記録を精査し、位置情報や送信端末の特定を急いでいる。
検察によれば、ムテトワ氏は約10日前に同ホテルでの滞在を手配し、当日は夕方にチェックインしていた。荷物や私物の配置に不自然な点は乏しく、急ごしらえの準備だった印象が残るという。足取りの空白をどう埋めるかが焦点だ。
大使の歩みと残された問い
ムテトワ氏は2023年12月に駐仏大使に任命され、在パリの南アフリカ大使館で任務にあたってきた。長年の政治経験を背景に、文化や経済の交流を担い、両国の関係強化に努めていた。現地の行事にも積極的に足を運んでいた。
ラマポーザ大統領は2025年9月30日、追悼の声明を出し、ムテトワ氏が多様な役割で国に奉仕してきたと述べた。残された家族と在外公館の同僚に哀悼を示し、フランス側の関係者にも謝意を伝えた。突然の喪失を国の痛手と受け止めた。
現時点で確認されている範囲では、自ら死を招いた可能性が高いという見立てが強い。ただ、捜査はなお続き、事実関係を裏付ける証拠の収集が進む。最後の足取りを静かにたどり、関係者の尊厳を守る報じ方が求められる。
