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スリランカの災害管理センターは11月30日、サイクロン「ディトワ」に伴う洪水と土砂災害で少なくとも334人が亡くなり、約400人が行方不明になっていると明らかにした。記録的な豪雨は島全体で130万人超に被害を及ぼし、政府は非常事態を宣言した。水が引かない住宅街では、ぬれた荷物を抱えた家族が避難所へと歩き続けている。
押し寄せた濁流の下で、日常はどう変わったか
被害は山間部の土砂崩れと低地の浸水が同時に起きたことで広がった。中央高地の村では集落ごと土砂にのまれ、沿岸部や首都コロンボ周辺では、膝まで水につかった街路を人々が列をなして避難した。多くは親戚の家や学校の教室に身を寄せ、電気や水道が途絶えた家には戻れないままだ。
体育館の床にはマットが並び、子どもたちは配られたノートを膝の上で開く。仕事場を失った日雇いの人々は、いつ賃金が途絶えるかという不安を口にする。災害管理センターによれば、複数の県で数十万世帯規模が避難や断水を強いられており、衣食住の確保と同時に、今後の収入の目途が立たない世帯も多い。
当局は、今回の洪水と土砂崩れを過去20年で最悪規模の自然災害と位置づけている。2004年のインド洋大津波を経験した世代にとっても、雨による浸水と崩壊がこれほど長く続く現実は重い。海からではなく空からの水が暮らしを奪うという構図は、気候変動と急速な都市化がもたらす新たな脆弱性を浮かび上がらせている。
非常事態宣言と救助体制、試される「備え」の実力
死者と行方不明者が急増した段階で、政府は全土に非常事態を宣言し、軍と警察の部隊を広域に展開した。シンガポールのCNAや中国の新華社通信などによれば、ディッサナーヤカ大統領はテレビ演説で、国家として歴史的な規模の災害に直面しているとの認識を示し、国際社会と協力して復旧と再建を進める方針を強調したと報じられている。
現場では、軍のトラックが倒木でふさがれた道路の確保に追われ、ボートやヘリコプターが孤立集落への物資輸送に当たっている。各紙の報道では、コロンボ北方で患者向けの食料を運んでいた空軍ヘリが河川に不時着する事故も伝えられた。山あいの村では橋が流され、徒歩での移動すら危険な場所が残るなど、救助の網が行き届きにくい地域が浮き彫りになっている。
2004年の津波以降、スリランカは避難訓練や早期警報システムの整備を進めてきたが、今回のように島全域で同時多発的に洪水と崩壊が起きる事態は想定を超えた。脆弱と指摘されてきた山村の住宅や河川堤防の補強、貧困層が集住する低地の土地利用の見直しなど、復旧と並行して行うべき投資は多い。限られた財政の中で、どこに優先的に資源を振り向けるのかが、今後の政治判断の核心になる。
止まった教育と経済、地域全体に広がる気候リスク
災害の影響は教室にも及ぶ。教育省は交通網の寸断や校舎の損壊を理由に、大学や職業訓練校などの休校を12月8日まで延長すると発表した。進学や就職活動の時期と重なり、インターネット環境の乏しい学生ほど学びの機会を失いやすい。親世代もまた、子どもを安全な場所に残したまま被災した職場へ通うかどうか、日々迷いながら判断している。
インフラの停止は生活だけでなく産業にも波及する。内陸の高地では茶園への道路や橋が損傷すれば輸出の遅れにつながり、沿岸部の観光地では空港や港へのアクセス悪化が長引けば、観光客の回復が遅れる。災害リスクの高い地域に工場やホテルを集中させてきたこれまでの開発のあり方を見直すべきだ、との指摘も経済アナリストから出始めている。
同じ時期にインドネシアやタイでも豪雨災害が相次ぎ、域内の死者は合計900人を超えたと、イギリスのタイムズ紙などは報じている。モンスーンとサイクロンが重なった今年のような極端現象が増えれば、堤防や住宅だけでなく保険制度や国際支援の枠組みまで含めた「気候リスクへの備え」を、誰がどこまで負担するのかが問われる。スリランカの惨事は、その問いをアジア全体に突きつけている。
