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指定暴力団住吉会のトップが、かつての会長の自宅から多額の現金を盗んだ疑いで千葉県警に6日、逮捕された。窃盗と邸宅侵入などの容疑がかけられているのは、小川修容疑者(72)。捜査関係者によると、2022年5月ごろ、千葉県柏市の関功前会長(故人)の自宅に組員らと共謀して入り、現金約5千万円を奪った疑いが持たれている。この「トップ逮捕」は、暴力団と暮らしの距離をどう縮めてきたのか、地域社会にあらためて問いを投げかけている。
住宅街に走った緊張と、暴力団と暮らしの近さ
現場とされる柏市の一角は、通学路や生活道路が入り組む住宅街だ。報道で事件を知った住民からは、「トップ同士の内輪の金銭トラブルが、すぐ近くの家で起きていたのかもしれない」と受け止める声も出ている。表向きは静かな街並みでも、一つの邸宅が巨大組織の拠点や象徴となりうる現実が、あらためて浮かび上がった形だ。
今回の疑いが事実なら、故人となった前会長の自宅から、同じ組織の現会長が約5千万円を持ち去ったことになる。市民の目には、組織の内部でさえ金銭や権力をめぐる緊張が続いているようにも映るだろう。一方で、一般の家庭や商店にとって重要なのは、そうした対立が外部の人間を巻き込む事態に発展しないかという点だ。銃撃や報復が起きれば、被害を受けるのは周辺に暮らす人々である。
近年、暴力団事務所や関係施設を住宅街から遠ざけようとする動きは各地で強まってきた。2024年には、東京都新宿区のマンションに置かれた住吉会本部事務所について、東京地裁が使用差し止めの仮処分決定を出し、暴力団追放運動推進都民センターが住民約40人の委託で申し立てたと報じられている。トップ逮捕のニュースは、こうした住民側の長年の不安や行動の背景を思い起こさせる出来事でもある。
「社会対暴力団」へ、広がる包囲網
小川容疑者が率いる住吉会は、警察庁の白書などで全国に拠点を持つ大規模団体と位置づけられてきた。もともと港湾労働の集団から発展し、関東を中心に勢力を広げてきたとされる。今回、そのトップが窃盗容疑で逮捕されたことは、組織全体への捜査が本格化する節目としても受け止められている。もっとも、刑事手続きはこれからであり、有罪が確定したわけではない。
暴力団排除の取り組みは、警察だけに任せる段階をすでに越えている。大阪市など各自治体は、独自の暴力団排除条例を定め、市民や事業者も契約や取引で関係を持たないよう求めている。大阪市の条例は、「警察対暴力団」から「社会対暴力団」へと発想を転換する必要性をうたう。金融機関や建設業者、不動産業界が暴力団と距離を取ることで、資金源を断つ狙いだ。
裁判所も、こうした流れを後押しする役割を担い始めている。住吉会本部事務所の使用差し止めを認めた東京地裁の仮処分決定では、定例会の開催や構成員の立ち入り、看板の掲示といった行為が禁止された。背景には、近隣住民が「平穏な生活を営む権利」が侵害されているとして、暴力団対策法に基づく代理訴訟制度を活用したことがある。住民と弁護士、暴追センター、自治体、警察がそれぞれの役割を持ち寄り、法的な包囲網を築きつつある。
トップ逮捕で終わらせないために、地域が握る鍵
とはいえ、組織犯罪の歴史を振り返れば、トップの逮捕だけで団体が直ちに消えるわけではない。指導者が入れ替わっても、資金源や人脈が残れば、看板を変えて存続する例は少なくない。今回のように、同じ組織内での金銭をめぐる疑いが表面化したとしても、それが必ずしも暴力団の弱体化につながるとは限らないとの見方もある。
だからこそ、地域社会がどこまで距離を保てるかが問われている。事務所や関連施設を住宅街から遠ざける取り組みに加え、自治体の条例に沿って、企業や市民が「知らぬ間に取引していた」という事態を減らせるかどうか。金融や不動産、建設など、暴力団が資金を得やすい分野ほど、反社会的勢力の排除を徹底する仕組みづくりが求められている。
住吉会トップの逮捕は、暴力団排除がどこまで進み、どこにほころびが残っているのかを映す鏡でもある。警察の捜査が進む一方で、住民や事業者、行政がそれぞれの立場から「関わらない」「近づけない」という線を引き続けられるかどうかが、静かな住宅街の日常を守る鍵になりそうだ。
