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玄関の鍵が回り、捜査員が足早に室内へ入った。警察は2025年11月12日、須坂市内のマンションを捜索し、入管難民法違反(不法残留ほう助)の疑いでタイ国籍の73歳女を逮捕した。県内で同容疑の検挙は初めてだという。容疑者が提供した部屋ではタイ国籍の男女が共同生活しており、8人が逮捕、10人が摘発された。住まいが違法滞在の足場になる構図があらわれた。
部屋に集まった18人の生活
捜査関係者によると、容疑者は不法残留と知りながら、タイ国籍の37歳女に市内マンションの一室を提供した疑いが持たれている。提供は一度に限らず、複数の部屋に広がったとみられ、住居の確保が滞在の拠点として機能した。警察は提供時の事情や金銭の授受があったかどうかも慎重に確認している。
容疑者が関与したとされる部屋には、21〜46歳の男女18人が共同で暮らしていた。うち8人は入管難民法違反などで逮捕され、10人は摘発となった。警察は容疑者の認否を明らかにしていないが、18人は容疑を認めているという。生活の場が法の網に触れたのは、外から見えにくい共同生活の綻びが端緒になった可能性がある。
捜査の発端は「不法残留している人がいる」という情報提供だった。内偵で出入りや居住実態を絞り込み、関係先を確認する過程で共同生活の実像が浮かんだ。玄関の靴や共有の炊事道具、寝具の配置など、暮らしの痕跡が積み重なり、居住の実態を裏づける手がかりになったとみられる。
不法残留ほう助とは
入管難民法は、在留資格の更新や変更をせずに期間を過ぎて滞在する「不法残留」を禁じている。今回問われているのは、その状態を知りながら助ける「不法残留ほう助」だ。住まいの提供や居場所の斡旋(あっせん)など、滞在の継続を容易にする行為が該当し得るとされる。住居は生活の基盤であり、支援の度合いが重く評価されやすい。
捜査では、容疑者が「知っていたか」が重要なポイントになる。本人の供述だけでなく、メッセージの記録、賃貸の契約実務、鍵の受け渡し、家賃の流れなど、周辺の客観資料が丁寧に積み上げられる。提供行為の頻度や期間、相手との関係性も、ほう助の立証に向けた検討材料になるとみられる。
県内でこの容疑による検挙が初めてとされた背景には、住まいの確保が違法滞在の長期化に直結するという問題意識がある。取り締まりの焦点が就労現場だけでなく居住の受け皿へ広がることで、滞在実態を面的に捉える動きが強まっている。今回の対応は、その方向性を象徴する一件だと映る。
地域で起きていたこと
共同生活は、互いに頼れるつながりを生む一方、居住者の入れ替わりが頻繁になると周囲から見えにくい空白をつくる。空室が続く部屋に人が集まり、家賃の割り勘で負担を抑える仕組みが回り始めると、生活の場が半ば自動的に拡張していく。こうした連鎖が、通報や情報提供が入るまで表に出にくい。
家主や管理側にとっても、空室対策や短期入居の受け入れがきっかけになる場合がある。本人確認や在留資格の確認が不十分だと、意図せず法令違反の関与に踏み込む危険がある。契約時の確認手続き、鍵の管理、入居者の把握といった基本が崩れると、問題の発見が遅れやすい。
地域での連携は、通報だけではない。外国人を雇う事業者、賃貸の仲介、自治体の相談窓口がゆるやかにつながることで、早い段階で困りごとを受け止められる。法令の理解を広げる取り組みが重なれば、違反の誘因を減らし、暮らしを守る防波堤になるはずだ。
捜査の行方と残る課題
警察は、住まいの確保に関わった経緯や資金の流れ、紹介役の有無を調べている。提供がどの時期にどれほど繰り返されたのか、合鍵の管理や家賃の集金方法など細部の確認が続く。18人の供述と押収資料が交差すれば、提供行為の輪郭はさらに明確になるだろう。
住居は生活の安定を支える一方で、法の枠外に人をとどめる装置にもなり得る。今回の一件は、その二面性を静かに照らした。入口を厳しくしながら、困窮や孤立を早期に受け止める回路を整えることが、次の違反を未然に防ぐ近道になる。