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兵庫県警は2025年11月9日、政治団体NHKから国民を守る党の立花孝志容疑者を名誉毀損の疑いで逮捕した。斎藤元彦知事らの疑惑を県議会で調査していた元県議、竹内英明さんに関する発信をめぐるものだ。批判の発信後、SNSで中傷が相次いだ経緯があり、捜査当局は発言の意図や目的を詳しく調べる。遺族はネット上の中傷が自殺の一因になったと主張している。
逮捕に至るまでの言動と拡散の流れ
立花容疑者は2024年の出直し知事選のさなか、竹内さんが疑惑の告発文書に関与したと公の場で指摘し、根拠が不明確な疑いを重ねてきた。12月の街頭では、警察対応に関する断定的な物言いを交え、動画配信でも強い調子の発言を続けていた。翌日以降、断片的な情報が切り取られ、短いフレーズだけがSNSで独り歩きした。
断片の拡散は勢いを増し、真偽未確認の言説が多数の投稿として重なった。賛否の応酬は次第に個人攻撃の域に達し、私生活に踏み込む内容も見られた。県警は、元の発信と二次的な拡散の関係性、当該発言が集団の行動を誘発した可能性を含め、文脈や時系列を整理している。どこから何が始まり、どのように変質したのかが焦点になる。
出直し選で立花容疑者は、斎藤氏の再選を支援する「2馬力選挙」を掲げて立候補していた。選挙戦では、竹内さんが“うわさ話を作った”といった趣旨の発言を繰り返し、支持者向け動画や街頭で訴えた。発信は短時間でも回数が重なり、選挙期間の可視性と相まって拡散した。今回の容疑はそうした一連の発言群の一部が、公然と名誉を傷つけたかに及ぶ。
遺族の訴えと捜査の視点
竹内さんの遺族は、匿名に近い不特定多数の投稿が精神的な圧迫を生み、急速に生活を侵食したと語る。交流サイトに並ぶ中傷の粒度は細かく、動画の切り抜きや文脈を欠いた引用が相次いだと主張している。遺族側は6月に名誉毀損容疑で刑事告訴し、受理された経緯がある。個々の投稿がどこまで被害と因果関係を持つのか、法の評価は慎重な検討を要する。
警察幹部は、逮捕予定といった流言が流布した局面で「事実無根」と否定し、誤情報の存在を明確にした経緯があった。立花容疑者はその後、一部の表現を訂正し謝罪に言及したが、拡散された断片はネット上に残り続けた。今回の逮捕により、訂正後の状況も含めた一連の発信の目的性、事実関係の検証、第三者の行動との因果が立体的に点検される。
名誉毀損は、公共性や公益目的、真実性の抗弁が絡むため、発言者の主観的認識や根拠資料の有無が重視される。選挙という特異な時間帯であっても、個人の人格権は守られるべきで、公共性の主張が直ちに免責を導くわけではない。調書、デジタル記録、当日の映像や音声の精査が進み、どこまでが意見、どこからが事実の摘示かが争点になりそうだ。
県政の混乱が残した影と、これから
竹内さんは県議会の調査特別委で要職を担い、出直し選ののちに辞職した。その後、自宅で亡くなっているのが見つかった。議論の熱とネットの速度が絡み合い、個人名を巡る断定が一気に広まった過程は、県政を揺らした一連の出来事の影の部分でもある。政治の現場で交わされた言葉が、画面の向こうで異なる重みを帯びることがある。
一方で、立花容疑者は今年6月、別の名誉毀損などの容疑で書類送検されている。複数の案件が並行するなか、表現行為を巡る線引きや、政治活動における強い言葉の扱いが改めて問われる。今回の逮捕は、選挙とSNSが密接に結びついた時代に、発信者が負うべき説明責任をどこまで具体化できるかを示す試金石になるだろう。
