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カメラのシャッター音が続く中、頼清徳総統が壇上に立った。26日、台北市の総統府で開いた記者会見で、中国が台湾統一に向けて軍備増強を急いでいると強い口調で批判した。あわせて、今後8年間で総額1兆2500億台湾ドル、約6兆2500億円の特別防衛予算を投じる構想を公表し、会場の空気が一段と引き締まった。
8年で1兆2500億台湾ドル、台湾が描く防衛強化の青写真
頼総統が示した特別予算は、2026年から2033年まで8年間かけて段階的に投じる計画だ。米国からの最新の防空システムを導入し、無人機や人工知能を組み合わせた指揮統制網を整えることで、規模で勝る中国軍に対し弱点を突く「非対称防衛」を高める狙いがある。従来の戦車や艦艇だけに頼らず、限られた資源で効果を最大化する発想だといえる。
台湾の2026年度の国防予算はすでにGDP比3%超が見込まれており、頼総統は2030年までに5%まで引き上げる目標を重ねて示した。今回の特別予算は通常予算とは別枠で、長期の装備調達や研究開発を安定して進めるための「上乗せ」と位置づけられる。景気や政権交代に左右されにくい形で、防空網や弾薬備蓄を厚くする意図がにじむ。
「最も危険なのは諦め」社会の心を守るという課題
頼総統が会見で繰り返したのは、軍備よりも先に国民の心を折らせないことの重要性だった。中国側は軍事演習だけでなく、宣伝や偽情報を通じて台湾社会の分断や無力感を狙っているとされる。歴史を振り返れば、侵略に譲歩した側が長く苦しんだ例が多い、と総統は述べ、日常の中で備えを続けることが平和を守る道だと訴えた。
ただし、大規模な防衛拡充には国内の合意が欠かせない。与党・民進党は立法院で少数にとどまり、特別予算案は野党の抵抗に直面する可能性が高い。財政負担や対中関係への影響をめぐる議論は避けられず、政府には内容の透明化と丁寧な説明が求められる。一方で、米国は以前から台湾に防衛費の増額と自助努力を促しており、今回の計画はその期待に応える側面もある。
高まる軍事的緊張と地域への波紋
台湾周辺では、中国軍機や艦艇の活動がここ数年で常態化し、台湾海峡の中間線を越える飛行も報告されてきた。日本の防衛白書は、頼政権が「中華民国と中華人民共和国は互いに隷属しない」とする立場を示しつつ、現状維持を掲げていると整理している。そうした中での防衛力強化表明は、単なる数字の問題ではなく、台湾が自らの立場を改めて国際社会に示す行為でもある。
近隣の日本や米国にとっても、台湾海峡の安定は貿易や安全保障に直結する。台湾が防衛を固め、中国が圧力を強める構図が続けば、偶発的な衝突のリスクも意識せざるを得ない。それでも台北の街では、人々が通勤電車に乗り、子どもたちが学校へ向かう日常が続いている。大きな予算と激しい言葉の応酬の陰で、その日常をどう守るかという問いが静かに積み重なっている。
