高市首相が「進撃の巨人」引用　国際投資会議で日本戦略をアピール

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2025.12.02

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12月1日、東京都内で開かれた国際投資会議で、高市早苗首相が人気漫画「進撃の巨人」の決めぜりふを英語で持ち出し、日本への投資を呼び込んだ。サウジアラビアの公的機関が主導する舞台で、危機管理投資を成長の柱と位置づける日本の戦略を、世界の投資家にどう印象づけようとしたのか。本稿では、その演出の意味と裏側にある課題を追う。

投資家の前で飛び出した「進撃」の一言

会場となったのは、サウジアラビア系の投資機関が主催する「FII PRIORITY Asia Summit 2025」だ。世界の政府関係者や企業トップが集まり、成長分野や資金の行き先を議論する場である。高市首相はその壇上で、日本の成長戦略を語る締めくくりに、巨人と戦う主人公が仲間に向ける印象的な台詞を引き合いに出し、日本に全力で投資してほしいと英語で呼びかけた。

首相は冒頭、日本とサウジの関係や日本のアニメ人気に触れ、文化的な親近感を示したうえで、半導体やAIといった分野への「危機管理投資」が日本経済のカギになると説明した。エネルギーや食料の安定供給、医療体制の強化など、生活基盤を守るための投資も対象だとし、官民が連携して先手を打つ姿勢を強調した。

一見するとユーモラスな引用だが、背景には「Japan is back, invest in Japan」と繰り返し、日本が再び成長軌道に乗るという物語を共有したい狙いがある。市場の不確実性が増すなかで、リスクを取る投資家に対し、単なる税制優遇ではなく、国家としてどんな未来像に資金を導きたいのかを印象づけようとした形だ。

ソフトパワーと経済安全保障、世界との比較

サウジが主導するFIIは、中東版ダボス会議とも呼ばれ、各国のリーダーが短い言葉に自国の戦略を込めて発信する場になっている。かつて日本は「アベノミクス」といったスローガンで成長戦略を示したが、今回はマンガのワンシーンを通じて、より感情に訴えるかたちで投資家との距離を縮めようとしたと言える。

韓国がKコンテンツ、米国がハリウッド映画を通じて国の魅力を発信してきたように、ポップカルチャーを外交や経済セールスに使う手法は珍しくない。『進撃の巨人』は世界的にファンが多く、日本のクリエイティブ産業そのものが投資対象になり得る。首相の発言は、製造業やインフラだけでなく、文化産業も含めた「丸ごとの日本」に投資してほしいというメッセージとも重なる。

同時に、首相が強調したのは経済安全保障だ。レアアースなどの重要鉱物について、中国への依存を和らげるために代替の供給網を整えると説明し、サプライチェーン強靭化のための官民投資を呼びかけた。資源国や中継拠点との連携強化が進めば、日本国内の企業だけでなく、周辺国のインフラや物流にも長期資金が流れ込む可能性がある。

「全部投資しろ」の裏で問われる負担と持続性

もっとも、「全部投資しろ」という勢いの裏側では、そのコストを誰が負うのかという現実的な問いが残る。高市政権は「責任ある積極財政」を掲げ、大胆な財政出動で成長と安全保障を同時に実現するとしているが、国の債務残高が膨らむなかで財政規律をどう維持するかについては、国内外から慎重な目が向けられている。

首相は質疑で、成長を通じて税収を高め、債務指標の改善も同時に進めると説明した。インフラや研究開発への公的支出が民間投資を呼び込み、結果として金利上昇や信用不安を抑えられるという構図だ。しかし、少子高齢化が急速に進む日本では、将来世代の負担感や、社会保障とのバランスをどうとるかが依然として大きな課題である。

今回のスピーチは、アニメの一節という分かりやすい象徴を通じて、日本がどこへ向かおうとしているのかを示す試みだった。だが、投資家が最終的に見極めるのは、物語の派手さではなく、政策の一貫性と実行力だ。誰がどのコストを負担し、どの分野にどれだけのリスクを取るのか。その配分をめぐる議論こそが、これからの日本の成長戦略を左右していく。

投資家の前で飛び出した「進撃」の一言

ソフトパワーと経済安全保障、世界との比較

「全部投資しろ」の裏で問われる負担と持続性

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