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永田町の照明が落ち始めた時間、静かな議員会館の廊下に足音が重なった。自民党の高市総裁が日本維新の会の吉村代表、藤田文武共同代表と向き合い、臨時国会の首相指名選挙での協力と、連立政権も視野に入れた連携を要請したのである。両党は政策協議を翌16日から始めることで一致し、流動化する与野党地図の中心が一段と動いたと映る。
会談後ににじんだ「一致点」と16日の約束
面会後、高市氏は「基本政策はほぼ一致している」と語り、まずは政策のすり合わせを優先する考えを示した。首相指名や連立の是非を結論づける前に、土台となる論点の確認が欠かせないとの判断で、足元を固めるアプローチがにじむ。発言のトーンは抑制的だが、実務を先行させる構えが伝わってくる。
一方の吉村氏も、外交・安全保障や憲法改正などで共通項が多いとの認識を示し、政策協議の場付けに踏み込んだ。具体的には16日15:00から、高市氏、藤田氏に両党の政調会長を加えた4人で初会合を開く段取りである。誰がテーブルに着くのかを先に固めたこと自体、実務を動かす合図と受け止められる。
協議の柱には、維新の看板である「副首都構想」と「社会保障改革」が据えられる見通しだ。高市氏は副首都構想について、議員立法での具体化を展望し、2026年の通常国会をめどに形にしたい考えを示した。あわせて補助金の整理にも触れており、行財政改革の文脈で政策の優先順位を付け直す姿勢が浮かぶ。
首相指名の行方と、連立の「入り口」
焦点は、政策協議の進展がそのまま首相指名の投票行動に直結するのかどうかである。吉村氏は、政策がまとまるかは未知数だとしつつ、協議の結果を見極める姿勢を示した。党是に関わる分野で一致を積み上げることが前提となり、合意形成のスピードと質が維新の最終判断を左右するとみられる。
高市氏は会談で「連立を含む枠組み」での協力も視野に入れたいと伝えた。もっとも、連立とは閣内参加を伴う重い選択であり、政策・人事・国会運営の三位一体で折り合いを付ける必要がある。現時点で連立合意の見通しは立っておらず、まずは政策協議という「入り口」を丁寧に整える段階が続く。
同日、高市氏は国民民主党の玉木代表とも個別に言葉を交わした。政策テーマとして「年収の壁」など家計に直結する課題を念頭に置く構えもうかがえるが、連立の枠組みや首相指名での対応は各党が独自に判断する余地が大きい。野党間での候補一本化の動きも、現時点では明確な道筋が見えていない。
政策協議で問われる「副首都」と社会保障の実像
副首都構想は、災害時のリスク分散や行政機能のバックアップ、多極分散の成長戦略を同時に追う設計が要となる。制度改正から予算手当、産業・大学・官庁の再配置まで具体像は広範で、国と地方の役割分担を丁寧に描けるかが試金石だ。議員立法での提出時期まで逆算し、工程表を描けるかが問われる。
社会保障改革は、持続可能性と分配のバランスが核心である。保険料や給付の見直し、就労インセンティブの設計、デジタル化による給付・徴収の効率化など、どの順序で実施し、どこに痛みが生じるかを包み隠さず示す必要がある。補助金整理の議論とも響き合い、重複や非効率の削減が焦点に浮上する。
連立に至るか否かは別として、16日からの協議は各党の優先順位を可視化し、次の国会運営のシミュレーションにも直結する。首相指名という一票の重みが増す局面で、どれだけの合意を具体化できるのか。静かな会議室から始まる議論が、政治の針路をどこへ向けるのかが試されている。
