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日中両政府が、高市早苗首相と習近平国家主席の会談を2025年10月31日に韓国・慶州で開く方向で調整していることが関係者の話でわかった。APEC首脳会議の機会を捉えた動きであり、高市政権の対中外交の初手を占う局面である。28日には外相同士が電話で協議し、首脳級を含むハイレベル交流の重要性を確かめており、対話の回路が再びつながりつつあると映る。
慶州に集う首脳、31日へ向け空気が動く
歴史都市の石畳を踏む報道陣の足音が早まっている。各国代表団が次々と到着し、会場周辺では警備の動きが強まる。APEC首脳会議の会期は2025年10月27日から11月1日まで、首脳会合は10月31日から11月1日と案内されており、対話の舞台は整いつつある。もし日中首脳会談が実現すれば、会期中に周辺会場で行われるとみられる。
今回の開催地は韓国・慶州だ。各国が通商やデジタル、気候といった課題を持ち寄るなか、首脳同士の個別会談は雰囲気を左右する。特に米中や日中といった大国間の対話は、市場心理やサプライチェーンの見通しにも影響を及ぼすため、短い握手の一枚にも意味が宿る。静かな緊張と期待が共存している。
一部では二国間の個別課題の扱いが注目されるとの見方が広がる。首脳の発言は共同声明や議長総括の文言に反映されることが多く、周辺での対話が本会議の合意形成に波及する局面も少なくない。慶州の会場運営は粛々と進む一方で、各国随行の調整は慌ただしさを増しているとみられる。
外相電話が示した糸口
会談調整の前段として、2025年10月28日 14:00ごろから約30分、茂木敏充外相と中国の王毅外相が電話で協議した。双方は、首脳や外相を含めさまざまなレベルで意思疎通を行う重要性を確認し、課題と懸案を減らし理解と協力を増やす方針を共有した。形式だけの挨拶ではなく、次の対話を見据えた実務的な動きといえる。
日本側は、レアアース関連の輸出管理措置への懸念、東シナ海での活動に対する問題意識、拘束中の邦人の早期釈放と在留邦人の安全確保などを伝えた。さらに、日本産水産物や牛肉の輸入に関する扱い、10都県産の農水産物などに残る規制の撤廃も求めた。経済と安全保障が交錯する議題が机上に並んだ構図が浮かぶ。
王毅外相は「ハイレベル交流」の重要性に言及したとされ、回線の先で双方の温度差を探るやり取りが続いたもようだ。現時点で確認されている範囲では、具体的な合意や譲歩は示されていないが、接点を探るプロセスが動き出したこと自体に意味がある。電話の延長線上に、首脳同士の対話が据えられたと読むのが自然である。
初会談なら何が動くか
高市首相にとって習氏との対面は初となる見通しで、節目の一枚になる可能性がある。日本の首相と習氏の対面は昨年11月以来とみられ、ハイレベルの往来が細くなっていた時間をどう埋めるかが焦点だ。相互の懸念を管理し、摩擦の火種を抑え込む「管理された安定」へ舵を切れるかが問われる。
議題の中心は経済安全保障と地政学にまたがるだろう。サプライチェーンの強靭化、重要鉱物と先端技術の扱い、そして東シナ海での安全保障上の懸案は避けて通れない。水産物や牛肉を含む輸入規制の扱い、交流再開に向けた往来の利便性、学術・観光分野の協力余地も俎上に載るとみられる。言葉の選び方ひとつが市場の反応を左右しかねない局面である。
一方で、会談自体はまだ正式発表に至っていない。共同通信は両政府が31日の開催に向け調整していると先に伝えたが、政府の公式文書は現時点で確認されていない。期待先行を避け、確定情報と推測を切り分けて受け止める必要がある。会談が実現すれば次の連絡路が太くなる半面、不一致点が際立つ展開も想定しておくべきだ。
