京都大学の廣谷潤准教授と京セラ、排熱活用TRCをセラミックで実証

京大と京セラが排熱AIを実証、熱を計算に使う新方式

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京都大学大学院工学研究科の廣谷潤准教授と京セラは2025年12月、捨てられがちな排熱をAIの計算に使う「サーマルリザバーコンピューティング(TRC)」を、セラミックデバイスで実証したと発表した。電気に変えて回収するのではなく、熱の広がり方そのものを情報処理に“転用”する発想で、「熱のムダ」とAI計算のエネルギーロスを同時に減らせる可能性を示した。

捨ててきた熱を、現場の“判断”に振り向ける

今回のTRCは、ニューラルネットワークの一種であるリザバーコンピューティングを、熱の拡散現象に当てはめたものだ。ひとことで言うと「複雑に変化する物理現象を計算の器にする」方式で、熱がじわじわ伝わる時間変化を“計算途中の状態”として利用し、最後に簡単な読み出しで判定する。計算のために電力を注ぎ続ける通常のAI処理と比べ、熱を抱えた現場での省エネ効果が期待される。

狙いはデータセンター級の学習を置き換えるというより、工場設備や電子機器などでの状態監視を、その場で軽く回す使い方に近い。京都大学は、TRCを搭載したエッジAIで現場判定を進め、送るデータ量を1/10〜1/100にできれば、通信電力や遅延も抑えられるとしている。

省エネ競争の次の一手、ただし実装の問いは残る

生成AIの普及で計算需要が膨らむなか、計算そのものの電力を下げる新方式への関心は強い。NEDOも2025年にリザバーコンピューティングの有効性検証に向けた技術調査を掲げており、社会実装の道筋づくりを後押ししようとしている。TRCは「排熱回収=発電や空調」だけに寄らない選択肢として、計算と熱の関係を組み替える提案だ。

一方で、実験室の成立から製品へ進むには、温度環境の幅、再現性、外乱への強さ、既存の電子回路とのつなぎ方など、地味だが重要な条件を積み上げる必要がある。京セラと京都大学は、さらなるPoCやニーズ探索を進める方針を示しており、どの現場で「熱を捨てない計算」が最も効くのかが次の焦点になる。

参考・出典

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