本サイトの記事や画像はAIが公的資料や報道を整理し制作したものです。[続きを表示]ただし誤りや不確定な情報が含まれることがありますので、参考の一助としてご覧いただき、実際の判断は公的資料や他の報道を直接ご確認ください。[私たちの取り組み]
東京都内の公共職業安定所「ハローワーク」で、職員が偽名を使い求職者になりすまし、求人を出した企業に繰り返し応募していた事案が明らかになった。採用されると自らの就職として実績に含めていたとされ、公共の就業支援の数字の信頼性が問われている。なぜ現場でここまで「件数」にこだわる事態が起きたのか。
数字を追い詰める現場と利用者のずれ
なりすました職員は、実在の求職者ではないにもかかわらず、求人票を出した企業に面接を申し込み、実際に採用されるケースもあったとされる。企業側は通常の採用活動だと受け止めていた可能性が高く、本来なら別の求職者に割かれたはずの面接や選考の時間が奪われた形だ。
ハローワークは失業給付の手続きとあわせて職探しを支援する公的窓口であり、民間の紹介会社を利用しにくい人にとって数少ない選択肢だ。その職員が架空の求職者を演じて実績を水増ししていれば、窓口で真剣に相談してきた人ほど「自分は数字の一つにすぎないのか」という不信を抱きかねない。
今回の背景には、採用につながる求人割合の低迷など数字への焦りもあるとみられる。厚生労働省の集計では、ハローワーク経由で採用に至った割合は2024年に11.6%と過去最低水準で、求人の約9割は成約しなかった。「成果」を求める圧力が強まるなか、短絡的な手段で実績を取り繕おうとした疑いがある。
揺らいだ信頼をどう回復するか
就職件数の統計は、ハローワークの成果を示す指標としてだけでなく、雇用政策の評価や予算配分の根拠にも使われる。職員の不正が長期間見過ごされれば、数字全体への疑念が広がりかねない。行政の説明責任として、どの程度の件数に影響したのか、組織として把握できていたのかを早期に示す必要がある。
東京ハローワークなどは、求人票と実際の労働条件の違いに関する苦情は全体の0.06%にとどまると説明し、公的な紹介制度の信頼性を強調してきた。こうした利用者との信頼関係を守るには、職員の行為を個人の問題として終わらせず、採用実績の集計やチェックの仕組みそのものを検証し直すことが欠かせない。
一方で、窓口の担当者には、多数の相談をこなしながら限られた人員で成果を求められるという現実もある。過度な数値目標が不正の温床とならないよう、配置や研修を含めた働き方の見直しも欠かせない。利用者の一人ひとりに向き合う時間をどう確保するかが、制度の信頼を取り戻す出発点になる。
