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川崎市幸区の開発拠点で、試験機のファンが低く唸る。東芝デバイス&ストレージは2025年10月14日、業界で初めてとする12枚プラッタのHDD技術を検証し、2027年に40TB級品を市場投入すると発表した。クラウドや生成AIで膨張するデータを、既存フォームで吸収する布石が見えてきた。
40TB級へ、12枚スタックの衝撃
発表の柱は、ニアライン向け3.5インチHDDのプラッタを従来の10枚から12枚へ増やす「12ディスクスタッキング」だ。同社調べで業界初と位置づけ、フォームファクターは3.5インチを維持する。データセンター向けに40TB級の容量を狙い、2027年の市場投入を目標に据えたと示した。薄型化と高密度化を同時に押し上げる設計思想がにじむ。
12枚化の要は、積層部品の専用設計に加え、媒体をアルミ基板からガラス基板へ置き換えた点にある。ガラスは剛性が高く薄く仕上げやすいため、メカの安定性や面内精度が改善し、信頼性の底上げにつながると映る。外形を変えずに内部の“余白”を捻出する発想が、容量の天井をもう一段押し上げる。
背景には、クラウド拡張や動画配信の浸透、そして生成AI・データサイエンスの普及がある。蓄積対象は肥大化を続け、1ドライブあたりの実効容量を高める発想はなお有効だ。既存の3.5インチエコシステムを活かしながら総容量を伸ばすこのアプローチは、データセンターの棚替えコストを抑える手段として合理的に映る。
ガラス基板とMAMRがもたらす伸びしろ
今回の技術検証は、媒体の素材転換に記録方式の進化を重ねる構図でもある。東芝はマイクロ波アシスト磁気記録(MAMR)を組み合わせ、書き込み時の磁化反転を助けることで高密度化をねらう。プラッタ枚数の増加と信号処理の改良を束ね、40TB級の現実解を描いた格好だ。薄くて強い媒体は回転系の安定にも寄与する。
同社は容量表記として1テラバイト=1兆バイトを用いると明記しており、ユーザー環境やフォーマットにより利用可能容量は増減し得るとする。定義を開示した上で「40TB級」をうたう姿勢は、運用現場の体感値とのズレを抑える狙いがあるとみられる。数字の意味づけを丁寧に示すことは、TCO議論の土台を整える。
ガラス基板への移行は、熱変形や振動の影響を抑え、積層の密度をさらに攻める余地をつくる。機械設計と媒体材料、ヘッド/チャネルの最適化がそろって初めて面密度は伸びる。発表文からは、解析技術を起点にパーツレベルで積み上げた様子がうかがえる。小さな改良の総和で大容量を引き寄せる手つきが印象的だ。
生成AI時代のDCに向けた現実解と次の一手
東芝は、12枚スタックを次世代の熱アシスト磁気記録(HAMR)との併用も検討するとしており、さらなる大容量化の布石を打つ。現時点で確認されている範囲では、まずMAMRでの展開を主軸にしつつ、将来のHAMR移行に備える二段構えだ。データ爆発に歩調を合わせながら、成熟技術と新技術の間合いを測る。
同社はこの技術を2025年10月17日に川崎市内で開かれるIDEMAシンポジウムで披露すると告知した。製品仕様の細部や提供形態は今後の発表待ちだが、フォームを変えずに容量を積み増す方向性は明確である。ラック当たりのエクサバイト級を視野に、既存インフラの延命と拡張をどう両立させるかが焦点となる。
生成AIの学習と推論が日常業務に入り込み、ログも映像もデータが止まらない。フラッシュの単価改善が鈍る局面で、HDDの容量単価優位はなお強い。大容量HDDは冷静な現実解であり、40TB級の量産が見えてくれば、保有コストの勘定は再び動く。市場の要請と技術の歩みが、同じ方向を向き始めている。