トランプ、UN総会で国連を批判し移民・気候政策を非難

2025年9月23日、ニューヨークの国連総会の壇上で、トランプ米大統領が国連批判と移民・気候政策への強い非難を展開した。世界共通の舞台で放たれた言葉は何を意味するのか、私たちはどう受け止めるべきか？

トランプ氏、国連の舞台で放った「警告」

大会初日の朝、重厚な国連本部の会場に集まった首脳や外交官を前に、トランプ氏は率直な口調で切り出した。「国連には非常に大きな可能性があるが、今のところ期待にほとんど応えていない」と述べ、国連の仲介や支援のあり方を鋭く問い直した。政治的な期待と実際の行動の差を指摘するその言葉は、会場の空気を一瞬で引き締めた。国際舞台での主張は外向けのメッセージであると同時に、国内の支持層にも語りかける演出でもあった。

演説は次第にトーンを強め、移民問題に言及すると「開かれた国境という失敗した実験に終止符を打つべきだ」と断言し、欧州諸国に向けては「あなた方の国々は地獄に落ちるぞ」と警告した。その場面は、単なる政策論争を越えて文化やアイデンティティへの懸念を突き付けるものになった。ちなみに国連総会では一人あたりの持ち時間は原則15分に設定されるが、トランプ氏の演説はその枠を大きく超え、約15分の枠を越えて1時間弱に及んだため、聴衆の注目は終始途切れなかった。

気候否定と自らの「手柄」——演説の音と風景

気候変動に関する発言は会場に強い反応を生んだ。トランプ氏は「地球温暖化は起きていない」「気候対策は世界が経験した史上最大の詐欺だ」と述べ、再生可能エネルギー政策を痛烈に批判した。こうした呼びかけは、漁村や島嶼国の代表が直面する現実と科学的知見との間にある溝を際立たせ、会場には見えない溝が一層深まる感覚が漂った。言葉は刺激的である一方、国際協力の議論をどう続けるかという現実的な作業を残した。

同時に、トランプ氏は自身の外交成果を強調する場面を重ねた。「七つの戦争を終結させた」と誇示し、国境管理の強化や紛争調停を自らの手柄として列挙した。ホワイトハウスは演説要旨でこれらの実績を改めて説明したが、外部の専門家や当事国の評価は一様ではなく、因果関係の解釈には慎重さが求められる。軽口交じりに「悪いエスカレーターと悪いテレプロンプター」と自嘲する場面もあり、厳しい批判とパフォーマンスが絶妙に混ざり合った舞台だった。

拍手と露呈した隔たり──反応と残る問い

イスラエル・パレスチナを巡る発言では、トランプ氏が「ハマスに捕らわれた人質を今すぐ開放せよ」と強く求めた場面で会場から拍手が起きた一方、パレスチナ国家承認を進める各国への批判は、国際社会の分断を改めて示した。欧州の一部は承認の動きを見せ、米国との歩調が必ずしも一致しない現実が浮かび上がった。総会は単なる演説の場ではなく、それぞれの国が次に取る一手を探る小さな演劇場のようでもあった。

演説後、各国の受け止め方は割れた。ある国は国連の役割と国際協調の必要性を訴え、別の国は主権と国境管理の優先を強調した。国連事務総長は結束を呼びかけたが、トランプ氏の言葉は今後の二国間協議や多国間交渉に影を落とす可能性がある。では、わたしたちの国や地域はこの分断の中でどのような価値を守り、どのように利害を調整していくべきか――その問いに向き合う作業がこれから本格化するだろう。