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国境をまたぐトラックが行き交う朝、ワシントン発の一文が北米の空気を変えた。2025年10月24日、トランプ米大統領がトゥルース・ソーシャルで「カナダとの全ての貿易交渉を打ち切る」と表明したのだ。関税を巡る応酬が続く中、政治広告をきっかけに、対話の扉が再び閉じた形である。北米経済の行方を占う一幕が、突然の断ち切りで描き直されつつある。
突然の「打ち切り」が走らせた衝撃
ワシントンの夜が更けたころ、短い投稿が拡散した。大統領は「関税は米経済と国家安全保障に極めて重要だ」と主張し、「彼らのひどい態度を踏まえ全ての交渉を打ち切る」と書き込んだ。鉄鋼、アルミ、自動車を巡る関税協議が続いていたが、その場が一刀両断されたと映る。交渉関係者が積み上げた時間の重みを置き去りにする速度感が際立つ。
両政府は年明け以降、関税応酬を重ねてきた。米国は一部の対加輸入に高関税を課し、カナダは対抗措置を発動した経緯がある。現時点で確認されている範囲では、交渉停止の正式な共同声明は出ていないが、再開の糸口は見えにくい。2026年の協定見直しを控え、緊張が再び強まっている。にわかに高まる不確実性が、企業の投資判断や雇用計画にも影を落とし始めている。
広告が火種に――レーガンの言葉をめぐる応酬
火種は、オンタリオ州政府が米国向けに流した反関税のテレビ広告である。故ロナルド・レーガン元大統領が1987年に語った関税批判の言葉を用いた構成で、財団側は「選択的な音声と映像の使用」として法的対応を検討中と表明した。大統領は広告を「偽物」と断じ、交渉打ち切りの直接の理由に挙げた。州首相は「広告は大統領の注意を引いた」と言及し、波紋の広がりを認めたと受け取れる。
背景には力比べが横たわる。米政権は年内、USMCAの適用外となる一部の対加輸入に最大35％の関税を課す方針を打ち出し、国内供給網と安全保障を理由に掲げてきた。一方のカナダは雇用と産業を守るとして報復関税や支援策を相次ぎ発表した。鋼材やアルミ、自動車など裾野の広い産業が直撃を受けるなか、両国は歩み寄りの余地を探っていたが、今回の決断で地図は描き替えられたとみられる。
