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スマートフォンで航空券を選ぶ指先の負担が、近い将来少しだけ増える。英政府は2025年11月24日、2026年2月25日からビザが不要な旅行者にも電子渡航認証ETAの取得を義務付けると公表した。日本を含む85か国の人が対象で、英国行きの飛行機や船に乗る前に「事前のデジタル許可」を得ることが条件になる。短期の観光や出張でも、出発前のひと手間が欠かせなくなる。
ビザ免除でも必要に 英国ETA義務化の中身
ETAはElectronic Travel Authorisationの略で、ビザ免除の短期滞在者に求められる電子的な渡航許可だ。申請者は政府の専用アプリや公式サイトから、氏名や連絡先、旅券番号などを入力し、顔写真をアップロードする。審査は多くのケースで数分以内に自動で行われるが、最大3営業日かかる場合もあり、思い立った週末旅行でも事前準備が必要になる。
費用は1人あたり16ポンドで、有効期間は2年またはパスポートの有効期限までの短い方とされる。同じETAで期間内なら何度でも入国でき、1回あたり最長6か月までの滞在が認められる仕組みだ。航空会社やフェリー事業者などは搭乗前にETAの有無を確認する責任を負い、許可を持たない人は英国に向けて旅立つこと自体ができなくなる。一方で、英国とアイルランドの市民やすでに長期滞在資格を持つ人は対象外とされる。
国境管理のデジタル化と世界的な潮流
ETA自体はすでに2023年10月から段階的に導入され、中東や北米などの一部の国を皮切りに対象が広がってきた。英政府によると、これまでに約1330万人がETAを取得し、入国審査の迅速化や行列の短縮に役立っているという。2025年4月にはEU市民にも適用が始まり、2026年2月の全面施行で、事実上ほとんどのビザ免除客が事前審査の対象となる。
背景には、紙の入国カードに頼らないデジタルな国境管理へ移行したいという狙いがある。英政府は、ETAや電子ビザを通じて全ての訪問者に「デジタル許可」を持たせ、将来的には顔認証などを使った非接触の入国を目指すと説明する。同様の仕組みは欧州側でも準備が進み、EUは2026年末以降にETIASという電子渡航認証を導入する計画で、英仏間の短距離旅行にも新たな「事前申請」が日常になる可能性がある。
出発ロビーで搭乗案内を待つ時間、その裏側では見えないデジタル審査が静かに進み、国境をまたぐ旅のかたちを少しずつ変えつつある。
