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電力輸入の数字が跳ねた。2025年11月3日、ウクライナのコンサルタント会社ExProが示した集計で、10月の電力輸入量は36万MWhとなり、ことしのピークに達した。無人機やミサイルの攻撃で系統の損傷と停電が続く中、欧州連系線を通じた“外からの電気”が、日々の需給の隙間を埋める役割を一段と強めている。
増える輸入、数字が示す圧力
10月の輸入量は前月比で約2.5倍の36万MWh。9月の14万MWhから急増し、8月の26.4万MWhをも上回った。電源の被害や補修の遅れで国内供給に余裕がない場面が増え、価格や容量が確保できる時間帯に合わせて越境調達が積み上がった格好だ。数字の跳ね上がりは、系統が受ける圧力の強さをそのまま映している。
仕入れ先の中心はハンガリーとポーランドで、シェアは前者が約51%、後者が約22%だった。加えて、維持工事で止まっていたスロバキア連系が月末に再開し、最後の3日間だけで7,600MWhが入った。輸入が膨らむ一方で、10月の輸出は90,800MWhまで細り、前月比で大きく縮んだ。エネルギーを外に出すより、内側で確保することが優先されている。
攻撃と停電、電力網の現在地
春以降に強まった無人機とミサイルの攻撃は、変電所や発電設備に断続的な損傷を与え続けている。復旧の手が追いつかない地域では計画停電が繰り返され、10月末にかけては時間帯ごとの遮断が広がったとの報も出た。系統運用には想定外のゆらぎが混じり、平時なら自国内で吸収できた需給の波を、近隣の余力で受け止める局面が増えている。
こうした越境の受け皿は万能ではないが、当面の安全弁にはなる。温度が下がる夕刻に需要が盛り上がると、系統は輸入枠や価格を見ながら外部電力の活用を織り込み、停電の幅や頻度を抑えにいく。発電設備の復旧と節電の積み上げ、そして越境の流路管理。三つの歯車がひとつでも噛み合わなくなると、数字の跳ねは容易に再現される。
越境インフラの動きと見通し
10月末、スロバキア側の維持工事が一段落し、同連系での取引が復帰した。修繕や価格に左右される越境フローは、月の後半にかけて緩やかに輸入寄りへと傾き、前年同月比では輸入量がほぼ倍増した。国境をまたぐ電気の道筋は、一本が止まれば別の一本へ重心が移る。秋の修繕と冬の需要増が交差する時期、経路の多重化は不安定さを吸収する緩衝材になる。
一方で、送電コストの調整論議も進む。系統補修に必要な原資をどう確保するかは、輸入と国内供給の値づけに跳ね返る。価格、容量、修繕、そして安全保障。複数の要素が絡む中で、10月の数字は“危機対応の現在地”を静かに示す。夜更けに街の明かりが保たれるかどうか、その答えは明日の需給だけでなく、越境の線路がどれだけ息をつけるかにもかかっている。
