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火花が消えた鉄骨が、鈍い音を残して折り重なった。韓国・蔚山の火力発電所でボイラー塔が倒壊し、作業員が巻き込まれた。現地の消防によれば、1人の死亡が確認され、6人が閉じ込められている。解体準備中の事故で、政府は総動員で救出を急がせている。日本と韓国は同じ標準時のため、発生は日本時間でも同時刻となる。
現場で続く救出、揺れる足場の中で
倒壊が起きたのは2025年11月6日 14:00ごろだ。作業に当たっていた9人のうち2人は早い段階で救出され、うち1人はその後に死亡が確認された。残る6人の所在を探る作業が続いている。現場は鋼材が複雑に絡み合い、余震のように小さな揺れが続く。救助隊は資機材の搬入を絞り、空間の隙間を探るように前進しているという。現時点で確認されている範囲では、二次崩落を避けるため手作業が中心になっている。
倒壊直後、捜索は一時中断と再開を繰り返した。崩落した鋼材の角度が微妙に変わるだけで周囲の荷重が移り、近くの隊員が身を引く場面もあった。熱源探知カメラやスコープ、救助犬が投入され、声や体温の反応を丹念に拾う。金属が擦れる高い音が止むと、隊員は皆で耳を澄ませ、次の合図を待った。
何が起きたのか
倒れたのは高さ約60mのボイラー塔だ。発電所は運転を終え、解体準備に入っていた。塔の一部を切断して重心を調整し、段階的に撤去する手順のさなかに崩落が起きたとみられる。現場では高所の鋼構造が一気に座屈し、周囲の設備を巻き込みながら折り重なった。切断面の配置や残された支持部材の状態、作業時の荷重移動など、複数の要因が重なった可能性があるが、詳しい原因の特定には時間を要する。
施設は発電停止後の撤去段階にあり、内部には断熱材や配管が残っていた。救助にとっては、鋼材の不安定さに加え、粉じんの管理や視界の確保が課題になる。隊員は保護具を強め、散水で舞い上がりを抑えながら接近する。金属片の隙間から伸ばしたカメラに映るのは、暗がりと反射する破断面ばかりだが、その中で微かな動きや色の変化を探している。
行政の動きと住民への配慮
政府は関係機関に対し、人員と装備の総動員を指示した。消防や警察に加え、専門の技術者が現場に入り、重機の配置やワイヤの張り方を見直しながら、救助と構造安定化を両立させている。当局は周辺での安全確保を優先し、住民への避難案内や通行規制の運用を進めている。現場の動きは刻一刻と変わるため、発表は短い単位で更新され、夜間も体制が維持されている。
救出の最優先という方針の下、指揮所は二次災害を避ける線引きを繰り返す。隊員が近づける距離を数m単位で詰めるだけでも数時間を要し、無線には「固定良し」「荷重抜け待ち」といった短い言葉が飛ぶ。焦りを抑えるため、タイムラインは小刻みに区切られ、達成した安全化のステップがボードに書き込まれていく。現場の呼吸が整うほど、次の1歩が深くなる。
安全管理の課題が浮かぶ
解体は、稼働中とは異なる種類のリスクに向き合う作業である。支持部材を外す順序や切断点の設計、荷重の逃がし方、現場の意思疎通が少しでも揺らぐと、大事故につながる。今回の崩落でも、作業計画の妥当性や現場での遵守状況、下請けの連携体制など、確認すべき論点がいくつも並ぶ。関係当局は原因調査と併せて、関連法令の適用も視野に検証を進める見通しだ。光の当たらない手順書の一行に、次の事故を止める鍵が隠れているのかもしれない。
